公的医療費増こそ成長戦略/慶応大・権丈教授「構造改革180度転換を」

公的医療費増こそ成長戦略/
慶応大・権丈教授「構造改革180度転換を」

 慶応大商学部教授で政府の社会保障国民会議の委員でもある権丈善一氏は9月20日、横浜市内で開かれた関東甲信越医師会連合会の定例大会で「小さすぎる政府の医療政策」と題して講演し、「10年間続けてきた構造改革を180度転換する必要がある。積極的な社会保障政策に転換することこそ成長戦略である」と述べ、公的医療費を増やす方向への転換が経済成長には不可欠と強調した。

 権丈氏は「構造改革や上げ潮派の政策では、外需依存の成長しかできない。そうではなく、負担増によって得た財源を全部、医療や介護の現物給付に回せば、人々が老後の不安から解消される。老後は安心だから蓄えなくてよいと考えるようになり、1500兆円の個人資産が市場へ流れる」とも述べ、公的医療費の増大によって内需主導型の景気下支え効果が期待できると指摘した。

 自民党の麻生太郎新総裁が、消費税の引き上げによって景気が悪化するとの考えを示していることについては、「1997年4月に消費税が2ポイント上がったが、消費や投資は前年の96年後半から下がり始めていた。政府が公共事業費などを減らしたからだ。この傾向の上に消費税の増税があっただけ」と述べ、消費税増税が不況の原因ではないと強調した。

 負担増を国民に理解してもらう方策として権丈氏は、医療や介護の「見積書」を作成すべきと指摘。「政府にお金を預けることを嫌がるこの国では、自己負担を下げるには保険料がいくら必要だとか、産科医療を立て直すにはこのくらい必要だという目標を定めて提示することが突破口になる」と述べた。

 さらに「国民はテレビのコマーシャルで、本当に必要かどうかも分からないのにテレビや自動車が欲しいと条件付けられている。『テレビを買いたいから、税金を払いたくない』となる。一方で公的な医療はまったく広報をしない。テレビや自動車の広報活動をやめろとは言えないから、こちらも見積書を作って広報するしかない、というのが私の戦略」と説明した。(9/24MEDIFAXより)

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