入院時食事療養費 標準負担額引き上げ撤回を 会員病院調査で問題浮き彫りに  PDF

入院時食事療養費 標準負担額引き上げ撤回を 会員病院調査で問題浮き彫りに

 協会は、政府の入院時食事療養の標準負担額引き上げ方針について、会員病院院長(168病院)および栄養課責任者(入院給食担当課)を対象に意見調査を行った。調査からは、治療としての食事が継続できなくなるなどの問題点が浮き彫りとなっており、この結果を受け、協会は4月30日「入院時食事療養『標準負担額』引き上げの撤回を求める緊急要請」を安倍内閣総理大臣、塩崎恭久厚生労働大臣らに提出。入院時食事療養の標準負担額引き上げを再考し、撤回することに加え、標準負担額の引き上げを行うことなく、入院時食事療養費の引き上げを行うことを要請した。また、京都選出の国会議員に対しても要請内容が実現できるよう協力を要請する文書を送付した。なお、今回の調査にご協力いただいた会員病院院長、栄養課責任者の方々には、この場を借りて厚くお礼申し上げる。

食事は治療の一環大多数が引上反対

 入院時食事療養の標準負担額については、入院時生活療養の標準負担額と同様に、患者負担に「調理費相当分」を段階的に上乗せし、1食460円(+200円)にまで引き上げるという内容である。低所得者や難病患者等は現在の負担額を据え置くとしているが、多くの患者にとっては負担増となる。
 調査では、引き上げ方針に対して、病院長ならびに栄養課責任者ともに「反対」とする意見が大多数を占めた(図)。反対の理由として、食事は治療の一環であること、これ以上の患者負担は無理があることが挙げられたが、他にも、負担増となる金額が大きいこと、病院の収入が増えると誤解される、負担増の説明を病院側に求められるといった危惧が示された。
 また深刻な問題として、患者が食事を断る、持ち込み等の増加で、栄養管理、衛生管理が難しくなると、治療への悪影響出るといった懸念も示された。

調理師らの配置で「治療効果望める」

 調理師の配置状況やその必要性についても質問したが、献立通りに正確に調理するために調理師配置を必要としており、実際、ほとんどの病院で配置されていることがわかった。また調理技術は治療に活かすことができるという考えが大多数を占め、正確な調理だけでなく、見栄えの面でも技術を発揮できるとの回答があった。料理は同じ材料、調味料を使えば同じものが出来上がるわけではないので、技術によりおいしくなり、治療に活かせるとの意見もあった。調理師と管理栄養士が取組むことで、治療効果の上がる病院食を提供できるとする回答もあった。
 患者に負担増を求めているが、医療機関に支払われる入院時食事療養費自体は引き上げられないため、食材費や光熱費の上昇分を勘案すると病院(医療機関)側にも負担が求められている。負担をせず身を削っていないのは国(支払側)だけである。現場での患者への説明も、負担増額分が大きいだけに相当な負担となることが予想される。さらに栄養管理や衛生管理に影響が出かねないことを想定すると、標準負担額はすでに限界の額に達していると言え、標準負担額引き上げについて再考されるべきである。

患者負担見直しに議論つくしたのか

 4月28日、入院時食事療養見直しを含む医療保険制度改革法案は衆議院本会議で与党などの賛成多数で可決、参議院に送られた。衆院厚労委員会での本法案の審議時間は19時間で、入院時食事療養費等の見直しの議論にいたっては、わずか13分に過ぎないとされる。審議時間が確保できないと批判された医療・介護総合確保法の審議時間が39時間だったが、さらに20時間も短く、議論されたとは到底言えない状況だ。
 協会は衆院厚労委員会で採決が強行された24日に国会行動を行い、法案の徹底審議と「患者申出療養」創設等の中止を要請した。5月13日からは参院本会議の審議が始まっているが、参院厚労委員会での採決も今月中に行われるといわれている。協会は最終盤まで働きかけを行っていきたい。

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