入院患者の他医療機関受診取扱い 許し難い受診抑制の撤廃を
入院中患者の他医療機関受診の取り扱いが変更されてから、もう1年が経ったが、この取り扱いのため、今も多くの入院中の方が他の医療機関を受診できずに困っている。
DPC病院に入院中の方が他の医療機関を受診することはほぼ不可能であり、精神科病院、透析病院などの単科病院、規模の小さい病院に入院中の方が、その病院にない科、例えば近くの眼科や耳鼻科を受診することも容易ではない。
病院は診療情報提供書に多くの情報を記載して受診させなくてはならず、入院の形態によっては薬剤の処方も制限されることが一因で、その手続きは病院、受診する医療機関ともに複雑かつ面倒で、入院料も大きく減額されることから、可能な限り他医療機関を受診させないようにしている実態も原因になっている。それでも病院からは納得しがたい減収への悲鳴が聞こえる。
医療費削減の面では、厚生労働省の狙いどおり機能していると言えるが、現場においては納得できることではない。ただ、法である故、納得できなくても現状では従わねばならない。複雑、難解なシステムであるが、会員の皆様は問題なく事務処理を行えているだろうか。お困りの場合には協会までご連絡をいただきたい。
なお協会は、この許し難い「受診抑制政策」に対しても、即刻撤廃すべく、厚生労働大臣らへの要請、療養病棟や精神病棟に対するアンケート調査、医療関係団体や患者団体への賛同署名依頼活動―など、当初より様々な運動を行ってきたが、このたび、震災を契機に僅かだが道が開けてきた。被災地以外の医療機関が被災地の透析患者の転院を受入れたが、設備不足等により当該患者が透析を目的に他医療機関を受診した際には、入院基本料や特定入院料の減額を行わないことが、4月8日の厚生労働省の事務連絡において通達されたのである。
本件は、3月から東京保険医協会などが都内の医療機関の現状をいち早く厚生労働省に報告し、特例措置を設けるよう要望していた成果である。厚生労働省が漸くこの悪法の問題点を認めたことになるが、問題点は透析患者や被災者のみに係るものだけではない。今後も問題点を提議して、本規制を撤廃すべく主張していく必要がある。
保険医協会も、引き続きこの問題について取り組んでいくが、我々の活動は皆様の意見、要望で成り立っている。本件に限らず、困ったこと、わからないこと、要望すべきことなどがあれば、些細なことであっても、保険医協会までご連絡いただきたい。会員の正しい主張が日本のより良い医療を創ることになる。