保団連がシンポ 医師、患者、弁護士らが
混合診療の全面解禁阻止に向けた運動を訴え
保団連は10月26日、規制改革会議をはじめとする政府や財界が混合診療の全面解禁を打ち出す中、「医科・歯科混合診療問題を考えるシンポジウム」を開催し、医師、歯科医師、患者、弁護士が混合診療の全面解禁阻止に向けた運動を訴えた。
保団連シンポのもよう
冒頭、宇佐美保団連歯科代表が「歯科差額から保険外併用療養費制度への変遷」と題し、歯科医療における混合診療の歴史的経緯を解説。特に「補綴が自費の場合でも保存治療までは保険請求を可」とした昭和51年通知の重要性を強調し、結果的にこの通知が「特定療養費制度」や、「保険外併用療養費」への道筋をつけた可能性を示唆した。
続いて、07年11月に混合診療をめぐる東京地裁の裁判に係わった平井弁護士が、「混合診療禁止に法的根拠はないとした東京地裁判決の問題点」を報告。今裁判はインターフェロン療法に加えて、「療養の給付」に該当しない活性化自己リンパ球移入療法を行ったため、全額を自費扱いとされたものである。このことに対して、患者が健保法に反し、憲法にも違反するとして訴訟を起こしたもの。
裁判では、(1)保険対象医療行為と保険対象外医療行為とが混在している場合に、これを全体で一つの医療と見れるか、(2)健保法第86条に定めた以外は、混合診療は「療養の給付」に該当しないのか、が争点となった。
判決では争点(1)は、健保法の条項を見る限り一体とみる根拠は見出しがたい。「診療報酬の算定方法」及び「薬価基準」は個別に規定しており、複数の種類の診療行為や医薬品の投与を不可分一体の一連の医療サービスとしてとらえていない、として否定。争点(2)についても、「特定療養費制度」は「療養の給付」にあたらない医療行為のうち、高度先進医療告示に個別的、具体的に列記された高度先進医療等についてそれに要した費用を支給する制度であると解される。また、保険診療に自由診療が併用された場合に、保険診療部分にどのような取扱いがされるかという法解釈の問題と、差額徴収制度による弊害への対応や、混合診療全体の在り方等の問題とは、次元の異なる問題である、として否定。この結果、医療保険制度の趣旨に立ち返っての検討をせず、形式論理で混合診療を容認。何が「療養の給付」にあたるのかの議論をしているときに、「療養の給付」に該当することを前提にその対価を算出するための点数を定めたものを根拠にするという逆立ちの発想を行い、混合診療解禁へ先鞭を付ける政治的意味合いの強い判決となった。
同弁護士は、今後の課題として、医療保険制度とは何かという根本的視点から冷静な議論が必要であること、さらに将来的には健保法に、混合診療の禁止をきちんと条文化する立法的手当を考えるべきである、と指摘した。
続いて、「患者から見た保険外負担の実態と混合診療問題」について、「今後の難病対策」勉強会実行委員長の水谷氏が報告。混合診療解禁は自由診療を公認するということであり、すなわち国民皆保険制度が問われているということだ。患者障害者の人権保障として2つの「25条」がある。1つは憲法25条の「生存権」「健康権」、2つ目は国連・障害者の権利条約第25条「健康」権である。ただし、署名はしたが、未だ批准していない状況である。
障害者自立支援法など公費負担医療制度の改悪、さらに保険外負担によって、「治りたい」「最適な治療を受けたい」という願いは遠のいている。私たちの願いは必要な医療はすべて公的保険でみてほしいということである。混合診療解禁論では、安全で有効な新薬が開発されるなど「患者の立場」に立ったような論調が散見されるが、こうした動きに対しても、患者と医師・医療関係者が連帯し、反対運動を強めることが重要であると強調した。
その他、それぞれ医科、歯科の実態を報告するとともに、今後の混合診療全面解禁の阻止運動強化の重要性を訴え、最後に決議を採択し、シンポジウムを閉会した。
【京都保険医新聞第2669号_2008年12月15日_6面】