保健医療2035 皆保険解体の具体化を許すな! 府に厚労省への働きかけを要請  PDF

保健医療2035 皆保険解体の具体化を許すな! 府に厚労省への働きかけを要請

 6月9日に塩崎厚生労働大臣直轄の有識者会議「保健医療2035策定懇談会」がとりまとめた保健医療2035提言書をめぐり、協会は「あからさまな国民皆保険の解体方針」との批判談話を、6月23日に渡邉副理事長名で発表した。さらに7月1日には府内の全市町村長に対し、談話を送付すると同時に、「政府ならびに厚生労働省に対し、保健医療2035提言書を具体化しないよう、働きかけること」を求める要望書を提出した。7月9日には、渡邉副理事長自身が京都府庁へ赴き、府担当課と面談。同趣旨の要請を行った。府からは健康福祉部医療企画課長の柴田氏が対応し、協会の要請を受け取り、訴えに耳を傾けた。

医療者・患者・地方自治体の共同を

 協会はこの要請で、保健医療2035提言書は、皆保険制度を根底から解体するものであり、到底受け入れられないと強調。

 市町村は、1961年の国民皆保険体制成立以降、国保の保険者であり、一方で公衆衛生行政を担ってきた。80年代の臨調行革を受けて国が医療費抑制策を展開し、相次ぐ国庫負担率の引き下げや「保険主義」強調による財政圧力の下で、資格証明書交付による受診遅れや滞納処分問題等、様々な問題が起きてきたが、一方で多くの自治体担当者の方々が公務の本旨に立って仕事をされてきた。

 都道府県は、医療費抑制策としての医療計画による病床規制を行うよう義務付けられつつも、それを提供体制の整備・拡充手段として、積極的に活用するなど、地方自治体は住民に身近な行政体として踏みとどまってきた。

 しかし、医療・介護総合確保推進法(2014年)、医療保険制度改革関連法(15年)成立で、その一線は踏み破られようとしており、昨今の医療制度改革の果ての姿を示したのが「保健医療2035提言書」に他ならない。

 提言書がイメージする医療保険制度像は、(1)公的医療保険給付を限定し、(2)それを超える医療は自治体による「付加的サービス」とし、付加部分を受給するには、「金融サービス」を使い、低所得層は「財政支援」を活用するという「二階建て」制度となっている。

 これは、必要な医療をすべて保険給付する制度原則を取り払い、形だけの「皆保険」を残すものであり、自治体・住民・医療者の「自律性」に拠って、国のなすべき医療保障責務を放棄する構想である。そうした制度の下では、自治体は住民の医療要求を正面から受けとめ、医療を保障することが困難になる。

 医療者・患者・地方自治体が力を合わせ、国政策の誤りを正す、共同を作らねばならないときにきているとの要請を行った。

厚労省は実現に向け具体的施策検討へ

 一方、厚生労働省は8月6日、「保健医療2035推進本部」を設置。提言書の実現に向けた具体的な施策の検討を開始した。

 推進本部は厚生労働省事務次官を本部長に、医政局、健康局、保険局、老健局等、12部局で構成され、5つのチームを設置して検討(表)。9月を目途にとりまとめる予定だという。

 第1回の推進本部会議の配布資料では、提言書をまとめた「保健医療策定懇談会」が「平均年齢42・7歳という次世代を担う若い構成員」による「革新的な議論」をしたと評価。「厚生労働省は、真摯に受け止め、できるものから着実に進めていくべきものと考えている」と表明した。

 しかし、官僚も含めた「次世代を担う若い」世代の手で、国民皆保険の意義・本旨から外れた制度像が構想されたこと自体が、極めて深刻な事態である。

 協会は引き続き、この動きを注視する。同時に、皆保険体制の担い手たる医師団体の立場から、国民皆保険体制の意義を訴え、地方自治体・患者住民との共同を追求しながら、提言、要請活動をすすめていく。

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