会員調査 他院退院後1カ月以内の特定疾患療養管理料の減点などで  PDF

会員調査 他院退院後1カ月以内の特定疾患療養管理料の減点などで

実施期間 2014年12月15日〜2015年1月9日
対  象 京都府保険医協会の会員であって内科系の標榜科目がある診療所の管理者1,230人
回  答 369人(回収率30.0%)
方  法 質問表によるアンケート調査

 協会は、内科系の会員を対象に、「特定疾患療養管理料に関する実態調査」を実施した。

 本調査において内科系の標榜科目とは、内科、神経内科、心療内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、小児科、精神・神経科を指している。

 回答者の主たる標榜科目は、80%が「内科」であった(複数回答者含む)。

 また、「特定疾患療養管理料を算定している患者は、継続して受診している患者の何%位か」を質問したところ、「50%以上75%未満」が31%、「75%以上」が30%、「25%以上50%未満」が21%であった。5割以上の患者に特定疾患療養管理料を算定しているという回答者が8割を超えている。

管理料の退院後1カ月以内の算定制限について8割超が改善求める

 「他院を退院後、1カ月を経過していないことを理由に、特定疾患療養管理料を減点された事例があるか(それ以外に理由が考えられない事例を含む)」を質問したところ、「ある」が29%、「ない」が56%であった(図1)。

 他院退院後1カ月以内の減点事例が「ある」と回答した方に、その患者は国保審査分か、基金審査分かを質問したところ、「国保分」が63%、「基金分」が3%、「両方」が33%であった。

 全ての対象者に、「特定疾患療養管理料の『退院の日から起算して1カ月を経過した日以降に算定する』取扱いについて、どう思うか」を質問したところ、「廃止すべきだ」が50%、「自院の入院に限るべきだ」が31%で(図2)、8割超が改善を求めていることが分かった。他院退院後1カ月以内の減点事例が「ある」と回答した方に限ると、「廃止すべきだ」が55%、「自院の入院に限るべきだ」が43%となり、98%の方が改善を求めている(図3)。

 特定疾患療養管理料の「退院後1カ月以内の算定制限」を「廃止すべきだ」「自院の入院に限るべきだ」と回答した方に、その理由を質問したところ、「外来での慢性疾患の管理は当院が行っている」が86%、「病院・診療所の連携が損なわれる」が28%、「慢性疾患を有する患者の外来受診を阻害する」が21%であった(図4)。その他、「退院後1カ月以上でないと算定できないことの根拠が分からない」「退院後の方がより注意深い管理が必要だ」「特定疾患以外の入院、また検査入院でも算定できないのはおかしい」等の意見があった。

7種類以上の内服薬を投薬した場合の算定制限 8割以上が廃止を求める

 次に、「特定疾患療養管理料を算定する患者について、7種類以上の内服薬を投薬している患者がいるか」を質問したところ、「いる」が72%、「いない」が25%であった。

 このうち、「いる」と回答した方に、「その患者は薬剤料、処方料、処方せん料が減額になっているか」と質問したところ、「地域包括診療加算を届出していないので、全員減額している」が63%、「同加算を届け出ているが、減額しない患者と減額する患者がいる」が18%、「同加算を届け出ているため減額しない」が16%であった(図5)。

 7種類以上の内服薬を投薬している患者が「いる」と回答した方に、「7種類以上となった理由」を質問したところ、「加齢等により疾患が増え徐々に増えた」が78%、「病院や他の専門医療機関から紹介されるたびに増えていった」が61%、「入退院を繰り返すたびに増えていった」が29%であった(図6)。その他、「当初は内科疾患のみだったが、他医への通院が困難になり他科疾患の薬の処方が必要となった」「周辺に他科が少なく、内科を標榜する当院に集中した」「他科の処方を当院で一緒にと頼まれた」との意見があった。

 全ての対象者に、「7種類以上の内服薬を投薬した場合の減算についてどう思うか」を質問したところ、「廃止すべきだ」が82%、「このままで良い」が12%であった(図7)。このうち、7種類以上の内服薬を投薬している患者が「いる」と回答した方に限ると、「廃止すべきだ」が9割超に達する(図8)。

 「7種類以上の内服薬を投薬した場合の減算」を「廃止すべきだ」と回答した方に、その理由を質問したところ、「慢性疾患を有する患者の外来受診を阻害する」が61%、「7種類以上の内服薬を服用している退院後の患者を紹介された時に困る」が55%、「病院や他専門医療機関との連携が損なわれる」が35%であった(図9)。その他、「7種類に制限する医学的、科学的根拠がない」「複雑な疾患、大病院で多くの科に通院されていたのをまとめた場合等、逆に時間がかかる場合が多いのに減額は全く逆だと思う」「本人が幾つもの科を回らないでいいよう、良心的に複数の病態を診療しており、医師としても重労働となりながら、何故、逆に診療費を減額せねばならないのか。その人全体の診療費も安くなっているのに、不満だ」との意見があった。

開業医による外来での慢性疾患管理 病診連携を阻害する算定制限は廃止すべき

 特定疾患療養管理料を算定する診療所の内科系医師は、かかりつけ医として、慢性疾患の管理、検査・投薬、生活指導を担っている。退院後1カ月以内に外来受診した患者であるからといって、慢性疾患の療養を管理していないはずがない。

 また、2025年を目途に、構築することが構想されている「地域包括ケアシステム」の中でも、日常の医療を受け持つ「かかりつけ医」の役割は明記されている。特定疾患療養管理料の「退院後1カ月以内の算定制限」は、かかりつけ医の機能、病院・診療所の連携を阻害し、地域医療の確保に支障をきたす。

 さらに、7種類以上の内服薬投薬を行った場合の算定制限は、ガイドライン等に基づく医療から患者を遠ざけ、生命と健康を阻害する要因となり、逆に医療費の増加を招く。

 7種類以上の内服薬投薬を行った場合の算定制限は、患者の複合的な疾病の悪化を防ぎ、入院させずに外来で治癒・治療することを目指して薬剤の管理を行っている「かかりつけ医」の技術を評価しないばかりか、逆に当然支払われるべき薬価や技術料から報酬を減額するという、時代の要請に逆行した取扱いである。

 協会は、調査結果に基づき「特定疾患療養管理料は退院の日から起算して1カ月を経過した日以降に算定する」という告示・通知の廃止と、「7種類以上の内服薬を投薬した場合の算定制限」の廃止を求めて、要求運動を続ける。

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