代議員月例アンケート(89)「総合診療専門医」の制度化について  PDF

代議員月例アンケート(89)「総合診療専門医」の制度化について

対象者=代議員91人、回答数30(回答率33%)
調査期間=2015年6月30日〜7月15日

 2017年度から始まる新専門医制度では、今後すべての医師が取得しなければならないとされた19基本診療領域の一つに「総合診療科」が加えられた。4月20日には、日本専門医機構・総合診療専門医に関する委員会より「総合診療専門医 専門研修カリキュラム(案)」が公表された。このカリキュラムには、総合診療専門医に求められる能力として、(1)人間中心の医療・ケア(2)(諸要素から必要な情報を読み取り対応できる)包括的統合アプローチ(3)(多職種)連携重視のマネジメント(4)(地域の保健・医療・介護・福祉事業にも手を貸せる)地域志向のアプローチ(5)公益に資する職業規範㈮診療の場の多様性(に対応することのできる能力)などが掲げられている。2020年度には、この領域の研修を受けた医師が総合診療専門医として認定され、病院の総合診療科や地域の診療所で開業するということになっていく。この制度化について代議員の意見をきいた。

総合診療専門医の制度化に5割が反対

 総合診療専門医を専門医として制度化することについては、「反対」50%、「賛成」7%、「どちらともいえない」43%であった。(図1)

 「反対」意見では、「かかりつけ医で充分対応できており、必要性を感じない」「総合診療は専門科ではない」というものから、「心ある開業医はすでに専門医レベルのことは実行している。制度化することで風通しが悪くなり自由に行動できなくなる」「国が医者を支配するための道具と考えていることは明らかであり患者さんのためとは考えにくい」と国の統制を懸念するものが主であった。

 一方、「賛成」意見は、「かかりつけ医と自分で表明していながら、そのレベルにないA会員が数多くいる。医師会で自主的なスキルアップができない以上、何らかのレギュレーションでしばりをかけていくことは必要」というもの。

カリキュラムに47%が「問題あり」

 総合診療専門医のカリキュラムを見てどう思うかとの問いに、「問題がある」が47%、「良い」10%、「不充分」3%、「わからない」が40%であった。(図2)

 「問題がある」との意見は、「あまりにも羅列的すぎて、膨大な内容」であるなど修得範囲に関するものから、「現在の開業医は知らず知らずのうちにカリキュラムの内容は実行している。また日本の開業医は特定の専門科を持って開業しているのが特徴であり、まさに日本の医療を知らずに作ったカリキュラムとしか思えない」などの意見があった。

 「良い」とする意見では、「かなり高度な部分もあるが、地域志向アプローチの部分で非協力的な医師は多いと思う」と底上げを図るべきとの指摘があった。

開業医のあり方変えることに67%反対

 厚労省は「保健医療2035」提言で、今後10年間ですべての地域に総合的に診療を行う医師を配置し、このかかりつけ医に受診した場合の患者負担を他の医療機関よりも軽くするなどして、地域のかかりつけ医機能を確立せよとしている。当面、総合診療専門医と従来の開業医は併存するが、いずれ置き換わっていくことを国は期待しているものとみられる。こういった開業医のあり方を変えていく動きに対してどう思うか、との問いに「反対」が67%、「賛成」は10%、「どちらとも言えない」が23%であった。(図3)

 「反対」意見の主なものは、「今のままでも開業医は十二分に機能している」「開業医の多様性を否定するもの」「現在の医療問題の原因を顧みずにシステムを変えれば解決するようなやり方は反対。長年培われた地域医療の根幹は一度壊されたら復元できない」「開業医の分断・差別化、ゆくゆくは厚労省の統制化、医療費抑制の強化」といったもの。

 「賛成」意見は、「開業医のレベルアップが必要」「世論が変わる方向を支持しているなら、医師が変わっていくべき」であった。

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