代議員月例アンケート(86)「医の倫理」問題について
対象者=代議員92人、回答数=31(回答率=34%)
調査期間=2015年2月25日〜3月10日
京都府保険医協会は保団連近畿ブロックなどと協力し、他団体とともに「医の倫理」実行委員会を結成。2007年の医学会総会以来、同会で「戦争と医の倫理」が正式企画となるよう働きかけを行ってきたが、今回の医学会総会でもこの問題が取り上げられる予定はないとのことから、やむなく医学会総会と同日程(4月12日)で戦時下医学犯罪について考える講演会やシンポジウムなどを開催することとなった。この活動に関連して代議員にきいた。
戦時下医学犯罪未検証の認知度は8割
「731部隊」の医師・医学者が行った人体実験や細菌兵器の使用実験など非人道的な行為により、中国やロシアなどの捕虜や一般の人々が多数犠牲となったとされている。そうした行為を行った人々は戦後、その実験データと引き換えに戦犯追及を免れたとされ、その中には医学界において指導的役割についた人もいる。
こういった戦時下の医学犯罪行為について日本の医学界では未だ公式に検証されないままとなっていることの認知度について、「知っている」51・6%、「きいたことがある程度」25・8%と、8割近くが知っているとした。一方で「ほとんど知らない」12・9%、「まったくきいたことがない」も6・5%あった。(図1)
ドイツにおける検証については4割
「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目になる」とは、先頃亡くなったワイツゼッカー元ドイツ大統領の有名なフレーズだが、ドイツにおいては、精神医学精神療法学会が2010年11月26日に70年間の沈黙を破り3000人の医師が参加した追悼集会を開催。ナチス時代に精神科医によって死に追いやられた25万人以上の精神障害者に遺憾の意が表明している。ドイツ医師会も12年5月22日に過去の行為に対し謝罪し、行為の検証を進めていくことを決議している。
ドイツの医学界において医の倫理の検証が進んでいることの認知度について、「知っている」12・9%、「きいたことがある程度」29・0%と、4割が知っているとしたが、「ほとんど知らない」「まったくきいたことがない」は6割である。(図2)
「正しく振り返るのによい時期」
自由意見の記載では、「横浜市大の患者取り違いに端を発した医療への逆風は少し和らいだようです。あれ以来、我々医師も襟を正し、丁寧な説明等に取り組んできたことも大きかったと思います。しかし、医療者への同情(先生は忙しくて大変やろ)に甘んじている気がします。正しく振り返るのによい時期と思います(しかし、日本医学会が…)」「4月12日の“倫理的な”題目も戦争の悲惨さを語るだけの“ガス抜き”だけに終わらぬように」といった積極的意見がある一方で、「『医学会総会に関連したイベント』と受け取られかねない表現が使われていることには疑義を感じる」という名称を巡る疑義のほか、「ある種の思想的意図を感じるものには賛同できません」と否定的意見があった。
さらに、「大嘘を信じるボケがいるんだ」と歴史そのものを虚偽だと否定し、「左巻は去れ」といった記載もあった。
4月12日企画にご参加を
「医の倫理」実行委員会の活動と4月12日企画について、「知らなかった」が48・4%と「知っている」35・5%を上回った。(図3)
企画への参加の有無については、すでに予定があるためと理由を付したものもあったが、41・9%が「参加しない」で、「参加したい」は3・2%で、半数以上が無回答であった。(図4)
今年は戦後70年目の年となるが、繰り返される薬害や臨床データの改ざんなど、日本の医学界・医療界全体のあり方に対しては、依然厳しい批判の目が向けられている。「医の倫理」について然るべき十分な検証が行われるための第一歩として、会員各位には4月12日「歴史を踏まえた日本の医の倫理の課題」企画にぜひご参加いただきたい。