代議員月例アンケート(72)TPP交渉参加について
対象者=京都府保険医協会代議員95人 回答数=19(回答率20%)
調査期間=2013年3月28日〜4月10日
たとえ譲歩得られても8割が反対
安倍首相はオバマ米大統領と2月23日に会談し、日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加について「あらかじめ全ての関税撤廃の約束を求められない」との共同声明を発表。3月15日に正式に参加表明を行った。協会は地区医師会との懇談会やあらゆる機会を通じて、TPP交渉参加による国民皆保険制度への影響やISD条項(国家と投資家の紛争解決条項)が日本に及ぼすであろう悪影響などを説明し、反対を訴えてきた。2012年7月の定期総会の参加者アンケートではTPP参加に69%の方が「反対」の意思を示し、「賛成」は9%、「分からない」20%であった。そこで改めて現時点での代議員の意向をきいた。
安倍首相のいう「聖域確保」は困難
TPPに後から参加表明したカナダ、メキシコに対して、見直し再交渉を認めない制約が課せられていることから、安倍首相のいう聖域確保は困難で、日本には交渉の余地はないといわれているが、このまま参加することについてどう思うかを質問。
これに対し、「そもそも参加すべきでない」が32%、「譲歩を得られても公約に反するようなら撤退」が47%で計79%が否定的。「少しでも譲歩が得られるのなら参加してもよい」は5%にとどまり、「譲歩の有無に関係なく参加すべき」はゼロ。「わからない」が16%であった。(図1)
ISD条項の脅威排除を
TPPのモデルといわれる韓米FTAを締結した韓国で、ISD条項が早くも悪影響を及ぼしている。同条項は締結国の政策などで相手国の投資家や企業が不利を被った場合に、その国を訴えることができるというもので、(1)米国の投資ファンドが韓国政府を提訴(2)韓国の自動車排ガス規制がCO2排出量の多い米国車業界から訴えられかねないとの懸念から先送り―が起こっている。
国民のための政策が他国の企業に訴えられる、そういうことが日本においても起こり得ることをどう考えるかについて、「あってはならないことで、ISD条項自体を廃止すべき」が79%で、「やむをえない」はゼロ、「わからない」が21%であった。(図2)
皆保険への影響考え撤退を
日本の医療保険体制は交渉の対象外だから心配ないと喧伝されているが、TPP参加により、医薬品・医療機器価格の引き上げ、営利病院の参入、民間医療保険の販売規制不可などが狙われ、外堀が埋められるかたちで国民皆保険制度の空洞化が懸念される。
こうした皆保険への影響について、「悪影響が判明してからでは遅いので撤退すべき」が53%ではあるが、「皆保険が揺らぐ懸念は拭えないが、諸般の事情を勘案して参加すべきだ」も10%あった。「わからない」は3問中最大の37%であった。(図3)
6月に府民集会で反対アピールへ
今回の調査は回答率そのものが20%と低いものの、8カ月前の調査に比べ確実に反対の割合は高くなっている。一方で「わからない」とする割合も一定維持され続けており、この課題への取り組みの難しさを示している。引き続き医療をはじめ国民生活全般への影響などを訴えて参加阻止の取り組みを進めたい。協会はTPP参加反対京都ネットワークに参加した多様な団体とともに、昨年11月に続く第2弾の府民集会を6月30日に開催してアピールしていく。会員各位のご理解とご参加をお願いしたい。
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注)自民党が政権公約で示した〈TPP交渉参加の判断基準〉(1)政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する(2)自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない(3)国民皆保険制度を守る(4)食の安全安心の基準を守る(5)国の主権を損なうようなISD条項は合意しない(6)政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。