代議員月例アンケート65/今次診療報酬改定に対する評価  PDF

代議員月例アンケート65/今次診療報酬改定に対する評価

  • 実 施=2012年3月21日〜4月4日
  • 回 答=39
  • 対象者=京都府保険医協会代議員95人
  • 回答率=41%

 社会保障・税一体改革方針に基づく医療と介護の報酬改定が行われた。

 社会保障財政の大きな部分を占める医療費支出について、今回も前回に引き続き、可能な限りの伸びの抑制が行われ、その中で、高度・先端医療を経営中軸に据える医療機関に対しては、急性期医療への傾斜配分という形で国の成長支援策ともとれる改定となった。

 また、回復期を終えてさらに療養を必要とする長期患者は、介護保険からの給付と地域ボランティアなどを頼りとする「地域包括ケア」で支えるというのが国の構想であるため、受け皿である「在宅療養」部分については、診療報酬上の評価が行われている。

 ただ、その中身は、医療から介護へ、医師から看護師・介護士へという評価対象の移動と、高機能型の在宅対応医療機関に対する評価付けになっていて、それら以外の一般的な在宅や外来診療については、見るべき評価はない。

 協会は、開業医医療の力は、そのフレキシブルさと柔軟性にあると考えている。開業医は、日常診療においても、患者さんの生活問題についても、臨機応変に受け止め、対応能力を発揮してきた。これこそが、今日までの国民の健康と暮らしを支え、結果としての総医療費の伸びを抑制してきた力の源であると考える。今、これに対する評価を怠れば、開業医医療の持つ力は減衰し、国民生活と医療の持続可能性は大きく損なわれると危惧している。こうした、今次改定に関して協会代議員の評価をきいた。

開業医医療の評価の低さに不満

 まず、開業医が行う一般的な在宅や外来に対する評価の低さについて、「理解できる」はゼロ。「わからない」と答えた1人以外はすべて「不満」との回答であった(図1)。ただ、その約半数が「止むを得ない」としており、景気や震災の影響も含めて財源問題を理由にあげている。「不満」の最たるものはやはり厳しい医業経営環境の中で再診料の復点が実現しなかったことがあげられている。その中で眼科や耳鼻咽喉科の汎用点数が引き下げられたこともまた不満要因としてあげられている。

支援診の再編に7割が不満

 在宅療養支援診療所・支援病院再編を進める改定内容について、「直接関わりがないので分からない」9人を除いて、「理解できる」は1人のみ、89%が「不満」とした(図2)。その理由は、施設基準のハードルが高すぎる点。特に地方での参入が厳しいことや「1人で在宅に取り組む医師のやる気を削ぎはしないか」「本来患者との信頼関係でつくりあげられてきた在宅医療を在宅に特化した診療所が診るようにすることが本当に患者にとって良いことなのか」という指摘もあった。

 また、在宅ターミナルケアを進める改定内容について、直接関わりがない12人を除いて「分からない」が33%、「評価できない」が44%、「評価できる」は22%となった(図3)。ターミナルの評価引き上げが「家族に説明しづらい」「医療をバカにしている」など、逆に評価できない理由ともなっている。

介護へのシフト「評価できない」が半数

 維持期リハビリテーションの介護保険移行を進める改定内容について、直接関わりがない20人を除いて、「分からない」が26%。「評価できない」が53%、「評価できる」は21%となった(図4)。

後発品使用促進ありきは評価せず

 後発医薬品の使用促進にかかわる処方せん様式の変更について、処方せんを発行しない7人を除いて「評価できない」が59%、「評価できる」28%。「分からない」も13%あった(図5)。「評価できない」理由としては、「医師の裁量に任せるべき」「手間ばかりかかる」など。また、「使用促進をいう前に行政は品質確認を怠るべきでない」とする意見があった。

 院外処方における一般名処方加算について、「評価できない」は41%、「評価できる」34%、「分からない」が25%(図6)。「評価できない」理由としては、「後発品を使わせんがためだけの合理性を欠いたもの」とする評価が見られた。

開業医医療の活力を奪うな

 今アンケートを通じて見てとれるのは、再診料の復点が実現しなかったことも含め開業医医療に対する評価の低さへの不満が高いこと。そうはいっても国の財政事情を慮って「止むを得ない」との諦観が広がっていること。個別の項目では、「直接関わっていないので分からない」とする回答が多く、専門分化される中で、全体の一致した声はあがりづらくなっていること、などがあげられる。

 国の描く改革の全体構想が何を目指すのか、それに対して我々開業医がどういう医療を理想として掲げていくのか、それを今こそ明らかにしていかねばならないだろう。そして、開業医医療の活力を引き出すことこそが、この国の医療を強くしていくのだとの確信が求められている。

自由意見から

  • 地方はすでに限界に達している。
  • 病院と比べ勤務している医師数が少ないにも関わらず1人当たりの医師が行う診療や在宅医療の負担が大きく、現状と報酬が見合っていない。
  • 民主党政権にだまされ、厚労省にはしてやられました。国民の生命や健康よりも、医療費抑制を重視する医療政策には希望がもてない。3・11を経験した今こそ、“チェンジ”が必要です。
  • 不満はあるが社会情勢と財政を見ていると止むを得ない。
  • 再診料71点への復活が認められなかったことに対し、厚労省・日医のいずれにも不満である。
  • 在宅医療の促進には理解できるが、支援診療所が疲弊しないかが心配。結局、患者さんが迷惑するのではないかと危惧する。
  • 小さい科の基本的な検査の点数引き下げが、非常に心配。頻度の少ない治療の点数を引き下げることで、算術的な平均点数を指示している方法が納得しかねます。
  • 財務省・厚労省の方針を変えさせない限り、日本の医療は荒廃する。
  • 医師への管理・強化をもくろむつもりと思われる。現場を知らない方々の方針と思います。
  • 都市部を対象とした改定のように感じる。地方では当たり前に行っている行為が、都市部では行われていないのだなと理解しました。例:看取り、を含めた在宅医療。少しは地方の医療にも目を向けてもらいたい。
  • 病院との機能分化が必要な時に、再診料の復活は必要な手当と思います。

代議員月例 アンケート65 、今次診療報酬改定に対する評価。図1〜6

 

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