代議員月例アンケート(60)  PDF

代議員月例アンケート(60)

原発問題について
実 施=2011年4月27日〜5月25日  回答数=33
対象者=京都府保険医協会代議員 95人  回答率=34・7%

 3月11日の東日本大震災により福島第一原子力発電所において炉心溶融事故が発生し、放射能が拡散、収束の道筋も未だ不透明な状況にある。協会は4月12日の理事会で緊急声明を決議し、国や東電をはじめ関係団体に対して、事故の正しい情報提供、被曝対策の実施、生活支援等の拡充と、「脱原発」に向けたエネルギー政策の転換を要求した。隣県には原発が集中する福井県があり、今回の事故は他人事ではない。そこで、事故を受けての原発やエネルギー政策への意見をお聞きし、「原発問題」に関する意識調査と原発関係の活動の指針とするために、代議員アンケートを実施した。

事故発生後に「不安」増

 はじめに福島原発事故が起こる前まで、原発についてどのように思っていたかについて質問。11人(33%)が「不安を感じていた」、14人(43%)が「多少不安を感じていた」と回答しており、合わせて25人(76%)が事故前から原発に関して不安を感じていたと答えた。一方、「不安はなかった」との回答が2人(6%)、「あまり関心がなかった。あまり考えたことがなかった」が6人(18%)であった(図1)

(図1)

 次いで原発事故を受けて、原発についてどのように思うようになったかについて質問した。事故後「不安を感じる」との答えが23人(70%)で事故前より12人増加した。「多少不安を感じる」の7人(21%)を合わせると、事故前より5人増加の30人(

 1%)が不安を感じている(図2)

(図2)

 このことは、あまり原発に関心がなかった方や多少は不安を感じていた方が、福島原発事故によって危険性を目の当たりにしたために、原発への不安を感じ始めたものといえる。

 「その他」と答えた方は「起こるべくして起こった事故。戦後の誤った政策によるつけである」との意見を付けて、これまでの政府が行ってきたエネルギー政策を批判。一方、原発事故発生後もなお「不安はない」と答えた方が1人いた。

「現在ある原発停止」30%「新設すべきでない」46%

 今後の原子力発電所について、どのように考えるかを質問。「電力は原発に依存しているといわれている一方、原発がなくても現在その多くが休止している火力発電所等を稼働すれば、真夏の数日の午後を除いて電力不足は起こらない(十分対応可能な範囲)との実績統計もあるといわれている」ことを付け加え質問を行った。

 回答では、「現在ある原発を停止し、そして廃炉すべき」とする意見が10人(30%)、「今後は原発を新設すべきでない」とする意見が15人(46%)であった。この2つの回答は、基本的には原発から離脱すべきという「脱原発」を望む意見と受け取れ、合わせると25人(76%)が原発からの撤退の道を支持した結果となった(図3)。その一方、「今後も原発を稼働すべき」とする回答も5人(15%)あり、「稼働中の原発は継続して時間を稼ぐ」「より安全対策を強力にして、原発政策は続けていくしかないだろう」などの意見が出された。

(図3)

エネ政策転換を9割望む

 最後に、今後の国のエネルギー政策について、どのように考えるか意見をお聞きした。「省エネとともに、原発以外の様々な発電に替えるべき」と答えた方が2

 人(88%)で、福島原発事故後、原発に不安を感じるとするほぼ全員が、これまでの原発中心のエネルギー政策を転換し、省エネと原発以外のエネルギーへの移行を望んでいることが確認できた(図4)。しかし、「今後も原発依存のエネルギー政策を行う」とする意見も2人(6%)いて、「いたずらに原発に感情的に反発するのではなく、いかに更に安心できる原発政策にしていくかが重要であろう」との意見を寄せた。

(図4)

エネ政策転換へ社会・生活の見直しを

 協会は、長年にわたり原発に関する講演会やシンポジウムなどの取り組みを行う中、原発の抱える問題点や危険性を学び、情報提供を行ってきた。しかし残念ながら、チェルノブイリ原発事故と同レベル「7」の原発事故が起こり、周辺住民は自らの住まいから避難せざるをえない状況となり、子どもや妊婦をはじめとした住民の内部被曝など健康被害も深刻となっている。事故の収束に向けて工程表は出されたが、数々の障害により未だ先の見えない状況が続いている。

 事故後、国や東京電力は揃って、今回の事態は「想定外」であるとして、迅速・適切な事故対応がとれず、情報公開も迅速・正確・統一性を欠き、的確なモニタリングの提供や正確な危険性の説明がない中、国民の不安だけが強まっている。

 こうした危険を孕む原発が日本全体で54基ある。私たちの生活や仕事に欠かせない電気を「原発」以外のエネルギーで賄っていくことが必要であろう。そのためには、わたしたちの社会や生活そのものを見直し、原発のない豊かな生き方を考えていくべきではないだろうか。

表 自由意見から

○今回の事故をきっかけに脱原発・省エネが進むことを希望します。オフィスの冷房の温度を上げるだけで多くの電気が節約できます。使用済核燃料の最終処分地も決まりそうもありません。この面からも原発からの脱却は迫られていると思います。

○まず、新規の開発は停止する。現在の原発を評価し、至急に耐震、耐津波性能を見直すか、廃炉方向かというのを個別に判断する。代替エネルギー確保の目安とともに、ゼロをめざす。地震大国である日本に破壊し、制御不能になる可能性のある原発はなじまない。

○エネルギー政策では、原発依存をやめ、自然エネルギー・代替エネルギーへの転換を行うこと。私たちの市民生活では、過剰なモノ、エネルギーの消費をやめ、省エネ、質素だが充実した「小さな暮らし」へのライフスタイルの変換が重要と考えます。

○基本的には原発そのものが悪いのではなく、政策理念など、どのように原発を取り扱っていくのかという考え方と、利潤最優先の考え方が悪いと思われる。

○より安全対策を強力にして、原発政策は続けていくしかないだろう。

○福井には、白山、田園風景、美味な空気・水・米・魚介類、ゆったりした豊かな時の流れ、大切に守っていくべきものがたくさんあります。これからも、医学的立場から原子力に頼らない安全な生き方を国に働きかけるべきと思います。

○私たちの世代はまだしも、若い人たちは大変な負の遺産をかかえてしまうことになってしまいます。可能な限り起きた事故の波及を防ぐことしかないのでは? なんとかもっと良い政府を私たちは選べないのでしょうか?

○お手あげ。何もできない。

○年齢もそこそこいっているので、大きな被曝線量でなければ、現地にとどまり、残された住民の医療か健康保持に携わりたい。

○福井(地元)にお金をおとして作ってきたものだが、京都府、滋賀県も含め運命共同体なのですから、言う権利あり。琵琶湖の汚染は関西全体の命とりとなる。廃止すべし。

○全ての原発運転の中止と廃炉に向けた検討を開始すべき。

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