代議員月例アンケート/マイナンバー法案半数が否定  PDF

代議員月例アンケート/マイナンバー法案半数が否定

理念やセキュリティ問題等で

 政府は共通番号制度(マイナンバー)の2015年利用開始を目指して、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(通称:マイナンバー法案)を2月14日に通常国会に提出している。この法案について、その狙いやコスト問題、セキュリティ問題について代議員月例アンケートできいた。各設問で、制度導入に否定的な意見が多く、セキュリティに関する設問で5割が「導入反対」であった。回答は代議員95人のうち34人(35・8%)。

法案の認知度は27%

 内閣府の昨年11月に行った調査では「制度の内容を知らない」が8割を超えており、国民的議論を経ないまま導入を急ぐ政府の姿勢に批判が集まっている。この認知度をきいたところ、「内容まで知っている」が26・5%と内閣府調査(16・7%)を上回るものの、「内容を知らない」が73・5%と高い値を示した。(図1)

番号制度の狙いについて

 番号制度の導入を前提に、低所得者対策として「総合合算制度」の導入が検討されているが、負担と給付をリンクさせての給付抑制策に活用される可能性が危惧される。これについては、「負担と連動させて給付抑制すべきでない」が47・1%に対し、「ある程度給付を抑える仕組みも必要」も29・4%とある。(図2)

コスト負担について

 導入費用に関して政府試算(11年10月)は、公共機関に関わるものだけで5000億円(住基ネットの約13倍)、さらにシステム運用に年350億円の経費が必要としている。しかも、医療機関でのICカードによる保険資格確認には端末、ネット環境の整備が必要となるが、その機器導入費用はおそらく医療機関負担になると内閣官房社会保障改革担当は述べている(11年12月に保団連等に答えて)。

 この費用問題に関して、「財政難の中、大きなコストをかけての導入に疑問」が37・2%に対し、「コストはかけても導入すべき」が16・3%あった。一方、医療機関が導入費用を負担することについて、否定的回答が30・2%、止むを得ないが4・7%であった。(図3、複数回答)

セキュリティについて

 セキュリティに関しては、「甚大な被害が出るような仕組み導入」に否定的回答が50・0%、「国の責任と被害を最小限に抑える措置の優先」という条件付きで導入に賛成が32・4%であった。(図4)

◇  ◇

 今回のアンケートでは、それぞれの設問で、制度導入に否定的ととれる回答が約半数を占める一方、積極的な回答も2〜3割存在する。後者の回答に「税の不平等化を避ける必要悪」「モラルハザード対策のためやむなし」などの意見が付されているものもあり、現状が改善されないことへの苛立ちが見てとれる。また、制度が複雑でわかりにくくなったためにおこる給付漏れや二重給付のないようにしてほしいとの根強い要望がこの回答に表れていると思われる。

代議員月例アンケートのグラフ

法案の検討は慎重に

 番号制度は自民党時代から幾度も提案されては頓挫してきた経緯がある。現在提案されている法案も下記の問題があることを指摘して、慎重な対応を求めたい。

 一、小泉政権時代に番号制とセットで検討された「社会保障個人会計」は負担と給付を連動させ、負担の範囲内に給付を抑えることを企図するもの。現在、低所得者対策として検討されている「総合合算制度」も法律で制限しなければ同様の仕組みとして使われる可能性があり、同じ狙いをもつものである。そうなれば社会保障の理念を変質させる。

 一、導入費用が膨大であり、高額所得者の海外投資が把握されないなど、喧伝されている利便性向上と見合うものでないだけでなく、それを利用するための費用負担を医療機関など民間に負わせるものである。

 一、個人情報の不正利用や情報漏洩によるプライバシー侵害は、IT先進国であるアメリカをはじめ諸外国でも止めることはできていない。現在利用されている住民票コードは秘匿性が高く民間利用は禁止されるなどしているが、共通番号はさまざまな個人情報を名寄せし、将来的に民間利用も前提とするなど、漏洩の危険性も漏れた場合の被害の大きさも格段に高くなる。

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