代議員アンケート(55)医療安全対策について

代議員アンケート(55)医療安全対策について

調査=3月 対象者代議員=95人 回答数=24(回答率25・3%)

 協会は、会員に対して常に医療安全対策を啓発してきた。その中で2007年4月の医療法改定において、無床診療所にも医療安全対策の整備が義務化され、およそ3年経過したことから、協会代議員に対してアンケート調査を行った。回答した代議員は24人(うち、無床診療所は18人、有床診療所・病院は6人)で、回答率は25・3%であった。

安全対策の実施に苦慮

 協会は医療安全対策の一環として、ホームページにマニュアルのアップを行っているが、その周知度を尋ねたところ、「知っている」は3分の1であった。マニュアルは必ずしも協会のものを使用する必要はないが、今後とも機会あるごとに周知徹底を図っていきたい。また、マニュアルを再確認されたい会員各位には、このアンケート報告を機に、ホームページを見ていただければ幸いである。

 医療法で定められている、医療安全対策は大きく分類して4項目あるが、その中でも比較的実施し難い項目を尋ねたところ、以下の順であった。(1)医療機器安全管理(70・8%)、(2)医療安全管理(50・0%)、(3)院内感染対策(45・8%)、(4)医薬品安全管理(41・7%)。どの項目も比較的高い率で挙げられていることから、医療安全対策の実施に苦労されている様子が窺われた。

年2回の安全研修が義務

 医療法では、各医療機関に対して年2回程度の医療安全研修を義務付けている。協会は医療法改定以前から既に、「医療安全研修会」を会員の希望に応じて、臨機応変に開催しているが、今後、研修会について協会を利用する方は、「利用したい」「場合により利用したい」で、合わせて75・0%に及んでいる。今後とも会員に対して分かりやすい研修会開催を心掛けていく所存である。先述した通り、臨機応変の研修会開催が可能で、電話一本で対応させていただく用意があるので、是非とも研修には協会を利用していただきたい。ご連絡をお待ちしています。

 更に、協会は「医療安全研修会」で使用可能なテキストも発行している。一つは「事例で見る医療安全対策の心得」で、全国の医療団体や医療機関からも注文がきており、増刷・改訂を経て既に1万部の発行となっている。この「事例で見る医療安全対策の心得」の周知度を尋ねたところ、まだ半数の方が「知らない」と答えられている。広報は京都保険医新聞等でも再三行っていることから、表紙を見れば「これなら知っている」と答える方もおられると推測される。「心得」を知っている方のうち、75・0%が実際に現場で利用されていることから、医療安全対策の意識を向上させるためにも、更なる広報をしていきたい。

事例集も広く活用

 また、09年7月には「医事紛争事例集―医師が選んだ50事例」を発行した。この「事例集」を知っている方は54・2%で、その内、実際に利用されているのは84・6%にも上っている。これらの結果から、協会の医療安全に対する発行物には一定の評価が得られていると考える。こちらも「心得」と同様に更なる広報を行っていきたい。

医療法遵守は安全対策の意識向上につながる

 多忙を極める日常診療の中、医療安全対策を完全に講じることは、困難を伴うこともある。しかしながら、最低限でも医療法に定められている内容は、例外なく全会員に実施していただきたい。もちろん、医療法を遵守さえすれば、医事紛争や医療事故は発生しないということではないが、従業員に対しても、医療安全を意識するよいきっかけにはなるだろう。

 協会は09年度で医療安全対策50周年を迎えた。この歴史の積み重ねをもって、今後とも全力で会員に協力していく所存である。

自由意見

 自院で実行している医療安全に関する具体策や工夫等について、自由筆記形式で回答があった全てを挙げる。 

 (1)ダブルチェック、必ず医師が関与

 (2)マニュアルの徹底

 (3)内服での多剤投与で誤りやすいものは必ず投与前にダブルチェックを実施

 (4)日常業務が多忙になると報告書が出なくなるので報告書を書きやすいものにしたり転倒転落は別様式で対応している

 (5)月1回リスクマネジメント委員会を行い事例を検討し事故防止に努めるとともに年2回の研修会を開催している

 協会の医療安全対策に対する希望・要望について、自由筆記形式で回答があった全てを挙げる。

 (1)出版物もいろいろあるようなので積極的に取り組んでおられる姿勢に敬意。新たな希望要望は今のところ思い浮かばない

 (2)研修をしていただければぜひ利用したい

 (3)無床診療所で少ない人数で、しかも都市部と違い院内処方をしなければいけないところで実際に医療安全対策を実施することは不可能に近い。そのような中でも可能な方法を指導願いたい。せいぜい薬の取り間違いをしないようにすることで精一杯。医療機器は家族に頼むしかない

 (4)今後も多くの事例を報告し予防するための色々な、また実行しやすい具体的工夫を教えてほしい

 (5)3月13日医療安全シンポジウムのような実際の事例検討会を増やしてほしい

 協会の医師賠償責任保険制度に対する希望・要望について、自由筆記形式で回答があった全てを挙げる。

 (1)良い制度なので現状を続けてほしい

 (2)医療事故においてこの制度を利用することになった場合、マスコミ等を含め、医療側に立った対処方法をしっかり教えていただきたい

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