代議員アンケート(54)/再診料、外来管理加算の見直しについて

代議員アンケート(54)/再診料、外来管理加算の見直しについて

調査期間=2010年1月8日〜1月22日
対象者=代議員・予備代議員190人 回答数=67人(回答率35%)

再診料、外来管理加算をめぐる問題 外来財源400億円での“見直し”議論

 4月に実施される診療報酬改定に向けて、議論が大詰めの局面にある。改定率は、10年ぶりに全体でプラス改定となったものの、わずか0・19%増に止まり、1・55%増の本体部分は医科4800億円のうち、入院4400億円、外来400億円と区分されている。昨年12月23日の改定率決定に係る厚生労働相と財務相の合意文書には、「再診料や診療科間の配分の見直しを含め、従来以上に大幅な配分の見直しを行う」との文言が盛り込まれているとされるが、特に医科外来分の引き上げは極めて厳しい状況に置かれている。

 400億円という限られた財源の中、再診料と外来管理加算の“見直し”が、財源確保のツールとして俎上に上がっている。

 再診料について、病院(60点)と診療所(71点)の統一は、昨年12月の中医協で合意されているが、その後、厚生労働省の足立政務官が「診療所再診料の引き下げ」を示唆する等、統一方法が問題となっている。また外来管理加算は、08年改定で導入された「5分ルール」が診療の現場になじまないことから、廃止の方向で検討されているが、加算の点数設定や新たな要件が課題となっている。

 再診料及び外来管理加算等の基本診療料は、医師の診断技術の評価に加え、医療機関を維持する上で必要な費用を包括した診療報酬である。これらの改定の動きに対して、地域医療を担う保険医としてどう考えるかアンケートを実施した。結果の概要は以下の通り。

医療機関の開設形態

 (1)診療所64人(96%)、(2)病院3人(4%)

標榜科

 (1)内科系(内科・循環器科・小児科・精神科等)45人(67%)、(2)外科系(外科・脳外科・心臓外科・整形外科・泌尿器科・耳鼻咽喉科・産婦人科・眼科・皮膚科等)20人(30%)、(3)両方2人(3%)

“理不尽”な診療所再診料や外管引き下げ、国費による財源の投入を

 厚生労働省が主張する診療所の再診料の引き下げや外来管理加算の廃止・引き下げは、財源確保の「辻褄合わせ」として検討されているが、この点について意見を伺った。(1)「『配分見直し』と称した診療所への負担転嫁は理不尽である」48人(72%)と最多で、(2)「限られた診療報酬財源でのやり繰りは限界があり、国費による対策が必要である」33人(49%)、(3)「当初の厚生労働省試算と実際に検証された差額約1200億円を使い、病院・診療所とも十分な財源を配分すべき」28人(42%)と続いた(図1)

図1 診療報酬財源の確保をどう考えるか(複数回答)

 診療所の再診料や外来管理加算の引き下げは、「配分見直し」と称した診療所から病院への財源移転の一環として行われようとしている。しかし、08年改定時に導入された外来管理加算の時間要件(5分ルール)等の影響は、年間で約800億円に上り(日本医師会試算)、当初の厚生労働省の試算200億円をはるかに上回る額になっている(2年分で1200億円)。

 さらに、1月20日の中医協総会で厚生労働省は、08年改定の前後での外来管理加算の財政影響について、約1300億円減と説明している(社会医療診療行為別調査を基に算出)。

 過去2年間で得られた2600億円もの財源の費用対効果を検証することなく、再び診療所に負担が転嫁されるような議論が行われていることに対し、「理不尽」との意見が多くを占めた。また、医療崩壊の立て直しには、診療報酬財源という限られた枠組みを超えて、国費投入が必要との声も多く寄せられた。

再診料は診療所(71点)に揃えるべき

 再診料の病院・診療所の統一方法で適切と考えられるものは、(1)「現在の診療所の再診料(71点)に揃える」39人(58%)と(2)「病院の再診料を現在の診療所の再診料(71点)に近づけるよう引き上げる」20人(30%)を合わせて、90%近くが「現行の再診料71点堅持」を求めた。診療所の引き下げとなる「現在の診療所再診料(71点)と病院再診料(60点)の中間(65点)にする」との回答は4人(6%)に止まった(図2−1)

図2−1 適切と考える再診料の統一方法

 病院の引き上げの必要性は認識しつつも、その財源を診療所から補填することは容認できない、とする意見が大半を占めた。

 また内科系、外科系の医療機関ごとに集計した場合でも、「71点に揃えるべき」との回答が最多であった(図2−2・3)。これを見ても、標榜科を問わず、再診料ひいては基本診療料が、医療機関にとって重要な診療報酬であることが分かる。

図2−2 適切と考える再診料の統一方法(内科系医療機関:48人)

図2−3 適切と考える再診料の統一方法(外科系医療機関:17人)

再診料引き下げは医療サービス低下に直結

 マスコミの報道によれば、再診料統一の方法は、診療所(71点)を引き下げて、現在の病院再診料(60点)の中間(65点)で揃えることも議論の俎上に上がっているようだが、仮に65点となった場合の医療機関への影響を伺った。(1)「診療所の設備投資が滞る」39人(61%)、(2)「運転資金が苦しくなる」31人(48%)、(3)「従業員の減員や処遇の変更」30人(47%)と、患者さんへの医療サービスの低下が危惧される回答が多くを占めた(図3)。その他の意見の中には、「医院規模の縮小」や「生活を変える」のほか、「子どもには医師より別の職業を勧める」などが寄せられた。

図3 減収時の医療機関の影響(複数回答)

 診療報酬は医師等が行う医療行為への評価のみならず、医療機関で働くスタッフの人件費、医療機器の維持・管理費等、多くの費用が含まれている診療所も多い。現行の再診料は医師の診療技術の評価であり、外来で働く看護職員の人件費等が含まれていないと考えられる。しかし、それでも診療の充実のため、看護職員不足の中でも人件費を確保して雇用している。

 診療報酬の引き下げは、設備投資の滞りによる医療機器の更新遅れ、スタッフの減員や処遇の変更によるサービス低下につながり、医療機関のみならず、医療を受ける患者さんにも多くの影響を及ぼすことになる。

8割超が処置や検査の包括化に反対

 「一部の処置を初・再診料に含めていく形しか現時点では選択肢がない」(厚生労働省・佐藤医療課長)との発言に象徴されるように、再診料見直しの一つとして、一定の検査・処置を包括した外来診療料(現行は70点、200床以上の病院に導入※)のような点数の創設も懸念される。

 基本診療料への検査・処置等の包括化には「反対」が55人(82%)に上った(図4)。この間、厚生労働省の思惑で進められてきた点数包括化は、医療現場の声に逆行した政策と言える。

図4 基本診療料への検査・処置等の包括化

 ※包括されている検査・処置:尿検査(D000〜D002)、糞便検査(D003)、血液形態・機能検査(D005の一部)、創傷処置(100cm2未満・100cm2以上500cm2未満のもの)、皮膚科軟膏処置(100cm2以上500cm2未満のもの)、膀胱洗浄、膣洗浄、眼処置、睫毛抜去、耳処置、耳管処置、鼻処置、口腔・咽頭処置、間接喉頭鏡下喉頭処置、ネブライザー、超音波ネブライザー、介達牽引、消炎鎮痛等処置

医師の技術料、医療スタッフの労働力は正当に評価を

 初・再診料や外来管理加算など、基本診療料のあり方を尋ねたところ、「初・再診料等の医師の技術料の評価を欧米レベルまで引き上げるべき」「最低限のドクターフィとも言える点数は維持して欲しい」など、そもそもの医師の技術料の低さを指摘するとともに、医療スタッフの労働力が正しく評価されるべきとの意見が多くみられた。

 また、外来管理加算の5分ルールの無条件撤廃とともに、加算点数ではなく、患者さんにも分かりやすい点数設定にすべきとの意見も複数寄せられている。

再診料・外来管理加算は医師の診断 技術の評価、引き下げは許されない

 歴史的に見ても、外来管理加算は戦後一貫して、内科系の保険医の再診時の療養管理を技術的に評価してきた点数である。また全科共通の再診料は、再診という医師の診断技術自体を評価した点数であることが分かる。これらの技術を軽視し、単なる財源の辻褄合わせでの「引き下げ」は許されない。

 10年改定は、再診料は現行の診療所点数(71点)を堅持すること、外来管理加算は現行点数のまま「5分ルール」を廃止し、08年改定前の算定要件に戻すことが、地域医療をこれ以上崩壊させないための最低限の手段である。

医療費の総枠拡大で医療の立て直しを

 連立政権の中心的役割を果たす民主党は、昨年の衆議院選挙の際、「民主党Manifesto2009」において、「医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを提供する」ことを掲げ、「民主党政策集INDEX2009」においても、「累次の診療報酬マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車をかけた。総医療費対GDP(国内総生産)比を経済協力開発機構(OECD)加盟国平均まで今後引き上げていく」と掲げていた。

 しかし現状は、その“政権公約”が、実現に向かっているとは言い難い。診療報酬の引き下げをはじめとする低医療費政策が、この間の医療崩壊を加速させたと認識されながらも、診療所から転嫁しなければ捻出できないほどの財源で再生ができるのか。地域医療は病院・診療所が一体となって守っていくものである。医療費の総枠を拡大し、病院・診療所への十分な財源配分が急務である。現在の引き上げ率で不足するならば、緊急に上積みすることも検討すべきだ。

保険医の声を厚生労働省、中医協へ

 今回のアンケート結果は、長妻厚生労働相はじめ厚生労働政務三役、中医協の全委員、厚生労働省保険局の佐藤医療課長らに送付し、保険医の意見を踏まえて検討するよう求めた。今後も地域医療を担う保険医の声を厚生労働省等に届け、改善を求めていきたい。

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