介護療養廃止の延期は6年/厚労省、社会医療法人の特養運営も
厚生労働省は、介護療養病床の廃止を延期する期間を2012年4月から6年とする方針を固めた。民主党は10年末、廃止を3年延期する提言を細川律夫厚生労働相に提出した。しかし厚労省は「老人保健施設へ転換するには3年は短い」との現場の声を受け、6年延期と判断した。社会医療法人が特別養護老人ホームの開設者となることを認める規制緩和も行う。いずれも「介護保険法等の一部を改正する法律案(仮称)」に盛り込み今国会に提出する方針だ。
法案の要綱案によると、将来的に介護療養病床を廃止する方針は変えないものの、今ある介護療養病床に6年間の猶予期間を設ける。12年度以降は介護療養病床の新設を認めない。猶予期間の間に介護報酬など必要な支援策を設けて、老健施設などへの転換を進める。
介護療養病床をめぐっては、厚労省が06年の医療制度改革で11年度末までに全廃することを法律で決めた。介護療養病床の患者のうち医療の必要度が高い人は医療保険が適用される医療療養病床へ、医療の必要度の低い人は介護保険適用の老健や特養に移ってもらい、病床の機能分化を図ることにした。しかし06年時点で12万床あった介護療養病床は、10年6月時点で約8.6万床と思うように転換は進んでいない。
このため長妻昭前厚労相は10年9月、国会答弁で11年度末の廃止について撤回を表明した。その後のメディファクスの取材に「老健施設などの受け皿が不十分」と指摘していた。これを受け厚労省は関連法案の提出準備を進めてきた。
また、法案の要綱案によると、社会医療法人が特養の開設者となることを認める。厚労省老健局によると、現在の法律では特養を開設できるのは市町村などと社会福祉法人。政府が11年1月に発表した「新成長戦略実現2011」では、特養の開設者に社会医療法人を加えることが提言されており、これに沿って規制緩和する。厚労省医政局によると、社会医療法人は11年1月時点で116法人。
●財政安定化基金取り崩し保険料軽減
このほか、都道府県ごとに設けている財政安定化基金を取り崩して保険料の軽減に充てる。財政安定化基金は国と都道府県、市町村がそれぞれ3分の1ずつ出資した基金。老健局によると、09年度末で基金残高は計2767億円あり、全てを切り崩すと65歳以上の第1号被保険者の保険料を150円程度軽減できる。基金をどの程度取り崩すかについては、まだ決まっていないとしている。(2/10MEDIFAXより)