介護保険、現役世代の負担も俎上に/制度改正で
給付費が伸び続ける介護保険制度をめぐり、利用者負担割合や保険料の在り方を見直す議論が、厚生労働省の社会保障審議会・介護保険部会で本格的に始まっている。施策の新規導入や拡充に財源確保を義務付け収支の均衡を図る現政権の「ペイアズユーゴー原則」を踏まえ、介護給付を拡充するには保険料の上昇は避けられないとの見方も強い中、現役世代である第2号被保険者(40−64歳)の保険料の在り方も議論の俎上に上がっている。
厚労省によると、2011年度までの時限措置である「介護職員処遇改善交付金」を介護報酬に組み込んだ場合、第5期(12年度−14年度)には第1号被保険者(65歳以上)の保険料は全国平均で月額5000円を上回りかねないという。保険料の上昇を抑制するためには、公費負担割合の引き上げが必要との意見がある一方、「ペイアズユーゴー原則を踏まえ、公費負担を劇的に増やせないのであれば、保険料負担はある程度、第1号・第2号被保険者で分かち合う姿勢が大事」(土居丈朗委員・慶応大経済学部教授)との意見もある。
厚労省は10月28日の社保審・介護保険部会で、第2号被保険者の保険料負担の在り方にも言及した。現在は加入者の人数で決めている被用者保険の保険者負担額について、加入者の総報酬額に応じて決める方式(総報酬割)の導入を提案した。これに対し健保連の委員は「健保組合としては反対」と反発。一方、全国健康保険協会の委員は高齢者医療制度を例に挙げ「保険者の財政力に応じた応能負担で助け合う仕組みが適当」とした。ただ、介護保険制度の第2号保険料への総報酬割の導入については「費用負担構造の在り方を考えるとともに、複数の見直しを検討する中で検討すべき課題」と述べるにとどめた。
●「ペイアズユーゴー」に異議も
「ペイアズユーゴー原則」を社会保障分野へ適用することに対する異議も上がっている。川合秀治委員(全国老人保健施設協会長)は10月28日の介護保険部会で「ペイアズユーゴーとみんな簡単に言うが、本当によいのか」と委員らに訴えた。この日、提出した意見書では、介護保険制度の持続可能性を確保するため「消費税にとどまらない幅広い財源確保策を講じる必要がある」と主張した。
結城康博委員(淑徳大総合福祉学部准教授)も「介護の視点にもペイアズユーゴー原則を当てはめるというのであれば、民主党政権を批判したい」と訴えた。(11/4MEDIFAXより)