介護サービス利用者に必要な医療提供とは/介護給付費分科会
9月5日の社会保障審議会・介護給付費分科会では、介護施設入居者や居宅系の介護サービス利用者らに対する医療提供体制についても議論した。今回の意見を基に、より具体的な論点を整理し、今後の給付費分科会で議論する。厚生労働省老健局老人保健課の宇都宮啓課長は会合後記者団に対し「訪問看護の介護保険施設へのサービス提供などは医療保険での整理も必要なので(中医協の意見も)確認したい」と述べた。
●課題は「介護施設での医療の範囲」「在宅看取り」「訪看の柔軟化」
厚労省はこの日の会合に「各サービスごとの医療提供の在り方について」と「看取りの対応の強化について」と題する資料を提出し、論点として▽特養での医療の範囲や配置医の役割▽老健で提供される医療の範囲▽小規模多機能やグループホームでの看護職の配置▽医療機関以外での看取りへの対応強化─を挙げ、議論を求めた。
老健と特養での医療については山田和彦委員(全国老人保健施設協会長)、村上勝彦委員(全国老人福祉施設協議会総務・組織委員長)が提供体制の強化を訴えたほか、勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)が老健で高額な認知症の新薬が処方されない背景に包括報酬があると指摘した。
これに対し三上裕司委員(日本医師会常任理事)は老健での医療は不自由な面があると指摘し、高額薬剤の“外出し”や、老健入所者に救命救急医療が必要になった場合に算定が認められている1日500単位(月1回連続した3日のみ)の見直しを提案した。
医療機関以外での看取りと、居宅系介護施設での看護師の配置については、訪問看護(訪看)の充実が前提とした意見が複数上がった。池田省三委員(地域ケア政策ネットワーク研究主幹)は明確なデータを示せないため個人的な印象とした上で「本来は訪問看護が入るケースが急性期への搬送になっている現状があり、コストの面でも検証すべきではないか」と主張した。
齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)は特養の医療提供体制について「一つの案として外から訪問診療なり看護が入るというサービスを考えていくことも重要」と話した。グループホームなどへのサービス提供については「きちんと入れる仕組みとすべき」とし、退院後スムーズに在宅療養に移行するために訪看を重点的に提供できる仕組みも必要と訴えた。
また、高齢者の多剤併用に関して武久洋三委員(日本慢性期医療協会長)と大島伸一分科会長代理(国立長寿医療研究センター総長)が、日本老年医学会が出している「高齢者への投与は5剤までにとどめるべき」とする指針について触れ、医療界で議論すべき問題として引き受ける姿勢を示した。
また、医療と介護の連携強化を進めていく上で必要な制度については、具体的な地域の実情などに合わせて独自に調整できる設計にすべきとする意見も上がった。(9/6MEDIFAXより)