京都2014高齢者大学健康講座「快適排尿生活」
砺波理事が講義
京都高齢者大学健康講座第8講は12月4日、協会理事の砺波博一氏が「快適排尿生活」と題して講義を行った。
砺波氏はまず、排尿の問題を抱える高齢者が多いことを指摘。老後は楽しく快適に過ごしたいものだが、60歳以上の実に80%以上の人が何らかの排尿の問題を抱えていることを示した。その中で特に多いのが昼間・夜間の頻尿であり、3人に1人の割合とした。夜間の頻尿は、転倒・骨折につながる恐れもあり、尿が近いというだけではすまされないと指摘。尿失禁の悩みも多く、こちらは体の構造上の理由から特に女性に多いとした。
続いて尿について解説。尿は体の水分を調節し、余分な物質を排泄するためのもの。血液が腎臓で、濾過と再吸収を繰り返し1分間に1程度、1日に約1・5の尿を作ると説明した。
次に蓄尿と排尿が、脳、脊髄、交感神経、副交感神経等のネットワークによりコントロールされているというメカニズムを解説。例えば認知症になり、大脳での社会的判断による排尿を抑える機能に支障が生じると、不適切な場所で排尿をしてしまうなど、さまざまな問題が発生してしまうと解説した。
排尿に関する問題は、排尿障害と蓄尿障害に分けられ、両方を併せ持つ混合性障害もある。排尿障害の主な症状は、尿勢低下、尿線分割・尿線散乱、尿線途絶、排尿途絶、排尿遅延、腹圧排尿、終末滴下で、男性では前立腺肥大が原因となることが多い。一方、蓄尿障害の主な症状は昼間頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿失禁で、過活動膀胱が原因となる場合が多いとした。
前立腺肥大に対しては、交感神経遮断薬を用いることが多く、前立腺内平滑筋を弛緩させ尿道にかかる圧を下げ、尿を出やすくさせる。過活動膀胱に対しては、抗コリン薬を用い副交感神経の伝達を遮断、膀胱の蓄尿容量を増加させ症状を改善させる、と説明した。投薬による改善が期待できない場合には、どちらも内視鏡による手術が行われる場合もあるとした。
注意したいのは、これら排尿の問題に疾患が隠れている場合もあるということ。単なる頻尿ではなく、実は不眠、高血圧症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などが原因である場合があるとした。また、特に女性は排尿に関する相談が恥ずかしいことと思いがちで、さらに泌尿器科受診は敷居が高いと感じる人が多いのではないかと述べた。一般に8回以上で昼間頻尿、1回以上で夜間頻尿と言われる。気になる症状がある場合には、気軽に専門医に相談してほしいと訴えた。
次回は、2月5日「高齢になると生じやすい皮膚のトラブル」で山田一雄氏が講師を務める。本講座のみ、会場が河原町会場へと変更になるので、ご留意いただきたい。問い合わせは協会事務局まで。