京都府と協会の懇談会を開催
「府民と医療者は、府のリーダーシップに大いに期待」
協会は、知事宛に提出した「国民皆保険制度と地方自治体における医療保障施策のさらなる発展を求める要望書」(10月16日)の内容に基づき、11月19日に京都府当局と懇談を行った。府からは健康福祉部から健康福祉総務課・山田副課長、平井副課長、川崎主事、高齢者支援課・生田副課長、医療企画課・豊福課長、医療課・真下副課長が対応。協会からは垣田・鈴木両副理事長と事務局が出席した。双方からのあいさつに続いて協会から要望内容の説明し、府から要望に対するコメントがあった。
府/医療費はあらかじめ目標を定めて都道府県が管理するようなものではない
小泉医療制度構造改革により都道府県に策定義務の課せられた医療費適正化計画は2013年度から第2期に入る。協会は、同計画は都道府県に医療費抑制目標を押し付け、その目標に沿う提供体制構築を強いるものだと指摘し、国に対して見直しを求めるよう府に求めている。
これに対し、府は医療費適正化計画の名称は使わず、「中期的な医療費の推移に関する見通し」(08年6月)として策定。本来医療費は自治体が管理するような性質のものでなく、府民の健康長寿を目指す立場からの健康づくりや、安心して医療を受けられる医療提供体制政策の結果として医療費に表れるものだとの認識を示した。
府/調整交付金も活用し、滞納者の実態把握を支援
市町村国保に関する要望のうち、資格証明書交付中止や「悪質滞納者」への対応策としての、外部委員を加えた「資格証交付審査会」の設置等に対する府のコメントは、資格証はあくまで納付相談に応じず、支払い能力があるのに納付の意思を示さないなど、やむを得ない場合に発行すべきものと思っている。市町村にも同様のスタンスで対応するよう伝えている。交付すべきか否かの判断にあたっては、滞納者の生活把握が必要であり、その手段として市町村での税部門や生活保護部門の連携や、情報共有、資格証交付に関する第三者委員会等の設置などの事業について、国保の安定や財政健全化に資する取り組みに対する都道府県特別調整交付金を活用できることを市町村に紹介していると述べた。
協会/いわゆる「無保険者」の把握をどう進めるのか?
また、市町村国保の適用対象であるにも関わらずその手続きを行っていない無保険者の実態把握を求めたことに対し、府からは、日本の医療保険制度は、誰が本来加入すべきか、誰が加入手続きをしていないかを自治体が網羅的に把握する仕組みになっていない。対策としては、勧奨しかなく、例えば被用者保険からの離職による脱退者に対する国保加入手続きの勧奨は、ハローワークや府の設置するジョブカフェなどで、リーフレット配布やポスター掲示、相談に乗った際の注意喚起を要請している。他市区町村国保からの転入については、市町村で連携し、注意喚起する等の取り組みに努めるよう、今後とも助言していくと述べた。
協会/保険料賦課方式についてはどうするのか?
協会は、国保における保険料賦課方式について、均等割等の「応益割」部分の廃止、賦課上限の撤廃、累進的な所得比例方式への転換を求めている。これに対し、府は応益:応能=50:50で、これを賦課するのは法定事項であり、賦課上限も同様。都道府県レベルでこの原則を崩すことはできない。保険料は、一定所得以下の方は、応能割は賦課されておらず、応益割も7割・5割・2割の軽減制度があり、公費を充てる制度となっている。
府/国庫負担増額は引き続き要求
また、被保険者の生活圧迫要因になりかねない保険料引き上げや、一般会計繰入、前年度繰上げ充用を行わずに済むだけの国庫負担の増額をとの協会要求に対しては、府も同様の趣旨で、従来から国に対して要望している。国保の構造的問題は、保険者が義務さえ果たせば解消する性質のものではなく、高齢化や就業構造の変化等から不可避的に起こっている。保険者の努力以前に、ナショナルミニマムとして、国が財政責任を果たしつつ解消を図るべき、と述べた。
府/患者負担の軽減については国に要望
協会が提起する当面の窓口負担軽減策(現役年齢=2割、乳幼児・義務教育年齢=無料、高齢者=1割)については、具体的割合はともかく、高齢者、低所得者等、生活実態を踏まえて、窓口負担が過重なものにならず、安心して医療を受けることができるよう、国の財政支援強化を要望している。また、福祉医療制度を充実させてきたことも紹介された。
府/特定健康診査では国庫負担の改善必要
市町村が行う独自診査項目の追加に対する国庫補助の実現や、健診実施率による高齢者支援金の加算・減算制度の見直し等、特定健康診査に関する要望に対しては、国の定める検査項目実施に対する3分の1国庫負担が現行制度のスキームであり、要望実現は原理的に困難。本当に必要な項目であれば、国が制度化し、国庫補助の対象とすべき。むしろ一番の問題と考えるのは、現在国が3分の1負担としている補助単価が、実勢単価よりも低いことであり、改善を働きかけている。2015年度からの加算・減算制度は、国に対してこの間、加減算制度の廃止を要望してきた。現在のところ、加算率は0.3%程度と、ごく一部分の加算にとどまった。国において、影響が大きくないよう考慮されたのではないかと考えていると述べた。
協会/市町村国保「広域化」が地域医療後退につながらないよう手立てを
改正国保法が都道府県単位の市町村国保一元化を指向する一方、府が後期高齢者医療広域連合への参画や、関連して広域化推進を目指している状況を受け、協会はそれが国の医療費適正化路線と合致すれば、地域医療後退につながることを懸念している。ついては、府が表明しているとおり国民皆保険制度の堅持方針と、国庫負担増額を目指すよう求めた。
これに対し、府は、広域連合への参画については、まだ市町村と検討をしている段階と説明した上で、いずれにしても、国民皆保険制度の堅持方針・制度の安定的運営という一元化の目的はいささかもぶれることはないとコメントした。
また、一元化し、均一の保険料になれば、現在は保険料が低い市町村で引き上げになることを心配されているが、この問題については、国保法改正に盛り込まれた都道府県の調整機能強化、調整交付金増額などを積極的に活用していきたい。また、原則均一保険料となった後期高齢者医療制度の例も参考に、不均一保険料の検討にも取り組んでいくべきとの考えを示した。
協会/京都地方税機構への滞納事案移管の中止を
広域連合である京都地方税機構が設立(2009年)され、市町村国保料の滞納事案が移管されていることに関し、協会がそれを中止し市町村が親身になって収納相談を受けるよう求めたのに対しては、税機構への移管=市町村の国保窓口が相手にしないということではない。移管後も必要に応じて、国保の側で資格証・短期証交付などの窓口を開くとともに、税機構の地方事務所と市町村の国保窓口が意見交換を行い、連携して進めていると説明した。
府/未収問題では「まずは未収金を生まない仕組みを」
また、協会は医療機関窓口での未収金問題の深刻化に関し、被保険者の療養に要した費用については保険者が責任を持って支払うべきであり、具体的な制度運用についての検討を求めたのに対し、府はむしろ未収金を生まないことが重要であり、その一つの方策が一部負担減免制度である。府内ほぼすべての市町村が規程を整備して適用例も増えつつある。府の調整交付金による財政的なバックアップも構え、本当に必要な人は減免を受けてもらうことで、未収に至らないことが重要ではないか、との認識を示した。
推進法・提供体制でも意見交換
また、懇談では社会保障制度改革推進法の抜本改正、2013年度からの保健医療計画に関連し、府が医療・介護・福祉の総合的なビジョンを持った政策にあたるよう求めた。これに対し、京都府は推進法について国民会議の議論に地方自治体の意見を反映させたいとコメント。医療提供体制に関しては医療計画や関連する介護保険事業支援計画の策定に向けた作業状況等を説明し、地域医療の困難状況の解決に向け、KMMC(地域医療支援センター)や地域包括ケア推進機構を活用していきたいとコメントした。
「地域は公の力を必要としている」
以上を受けて協会から、医療費適正化計画に対する府の姿勢を評価し、引き続き医療実態に寄り添い、適正化強制はおかしいと最後まで主張してほしい。一体改革における提供体制改革がベッド数削減を進めている中、突き詰めれば府の姿勢は国とぶつかることもあるだろうが、地域に根差した医療政策の姿勢を守ってほしいと求めた。さらに、国は家族同士や地域の助け合いを強調するが、地域の実態は厳しい。地域は公の力を必要としていることを理解してほしいと訴えた。
府担当者に要望書を手渡す垣田副理事長
府との懇談であいさつを行う鈴木副理事長