京都府 国保「都道府県単位一元化」を提案

京都府 国保「都道府県単位一元化」を提案

診療報酬決定権限と指導の権限委譲も

 京都府は1月27日、「国民健康保険の都道府県単位の一元化」を含む「住民への健康医療政策の更なる充実に向けた検討課題について」を全国知事会の勉強会へ提案した。昨年、全国知事会は「すべての医療保険制度の全国レベルでの一元化」を要望しており、今回の府提案はこれとは内容を異にする。今後の国政レベルでの医療制度見直し論議に大きな影響を及ぼすことは、避け難い。

3つの提案内容と「都道府県医療費適正化計画」

 府の提案内容は、次の3点に大別。(1)現状分析のためのデータ把握の方法について(レセプト等のデータ)、(2)診療報酬決定、医療機関指導権限の都道府県への委譲、(3)国民健康保険の都道府県単位での一元化。

 06年成立の「高齢者の医療の確保に関する法律」により、全都道府県は「都道府県医療費適正化計画」を策定し、伸び続ける医療費を「適正化」するよう義務付けられている。

 この「医療費適正化計画」では、生活習慣病患者・予備群減少と入院医療費削減のための具体的な数値目標(特定健康診査・特定保健指導の実施率、平均在院日数の短縮等)を設定している。その適正化目標を実現するために、それと「調和のとれた」形で「地域の医療・介護の提供体制や健康づくりを実現」すべく、医療計画、健康増進計画、介護保険事業支援計画も見直されることになっており、介護保険事業支援計画を除く2計画の見直しはすでに終わっている。そして、「医療費適正化計画」は、実施2年目(09年度終了時)に進捗状況の評価、5年目(12年度終了時)に実績評価を行うことになっているが(高齢者の医療の確保に関する法律第十一・十二条)、この2年目の進捗状況評価に際して、都道府県は厚生労働大臣に対し、診療報酬に係る意見の提出ができ(同十三条)、さらに5年目の実績評価に際しては、意見を受けた厚生労働大臣は、都道府県ごとの特例的な診療報酬を定めることができるようになっている。

 今回の京都府提案は、そうした国の医療制度構造改革の本流に、主体的に乗っていこうという提案なのである。

京都府提案の問題点

 京都府提案は、都道府県が担わされた医療費適正化の「計画目標設定」や「戦略立案」、「企画調整」等を実行していくうえで、必要なレセプトデータ等の入手が困難であったり、健康医療政策の実施主体になりきれていない現状について、その仕組み自体を変える必要があると主張する。そして新しい仕組みとして、医療費適正化に対する法的責任を負う主体であることと、診療報酬を決定し医療保険制度を運営する主体であることとを、一体化する方向を打ち出している。そして、その具体化を試みる場所として、「国保の都道府県単位の一元化=都道府県が運営する地域保険」という絵を描いているのである。

 さらに、これに加えて京都府は、診療報酬を決定する権限の委譲も、国に対して主張している。これは、現行法中の「特例診療報酬」という考え方を何歩も押し進め、「特例」どころか、都道府県によって診療報酬が異なるという状況を、恒常的な制度にしてしまおうという提案である。地域の医療機関に支払われる診療報酬が違うということは、同一医療行為に対する診療報酬上の評価が、地域によって変わってくるということである。全国津々浦々まで、医療が行き届き、いつでもどこでもだれにでも、必要な水準の医療が提供される日本の地域医療は、現物給付と全国一律の社会保険診療報酬制度によって支えられ、発展してきたものである。国民皆保険制度が確立されてくる過程で、地域別単価や甲乙2表の診療報酬の併存などが撤廃されてきた歴史に、行政はもっと学ぶべきであろう。

国家責任を追及することこそが地方自治体の責務

 しかし今回の提案は、国が都道府県に医療費適正化を押し付けてくる限り、出されてきてあたり前の主張でもある。都道府県の立場からすれば、「どうしても医療費適正化をと言うのなら、我々により強力な権限とツールを与えよ」という主張が生まれてくるのは当然である。

 協会は、早い段階から、今回の医療制度構造改革によって必ず地方自治体の側から、こうした提案が出されてくることを予測し、警鐘を鳴らしてきた。今、自治体が言うべきは、「国民の生命・健康を守る医療保障の責任は、国にある」という大原則である。

国の医療制度改革へ影響も

 京都府は現在「広域連合を活用した税業務の共同化」をすすめている。この流れと今回の提案を組み合わせた「京都府モデル」が作られれば、今後進むであろう「新しい医療制度」の設計論議に、影響を与えることは十分予想できる。

 すでに、江利川厚生労働事務次官は、1月29日の記者会見の席上で、京都府提案に対し「大変意義のあること」と評価。今後京都府への協力を惜しまないとの考えを示したと伝えられている。

 今後協会は、府に対し、公開質問状などを通じてその意図と影響についての考え方を、明らかにするよう求めるとともに、皆保険制度と府民の生命と健康を守る府行政のあり方について、必要な働きかけを行っていく所存である。

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