京都市 医療なきリハビリ行政!? リハ分科会の驚くべき議論
京都市社会福祉審議会のリハビリテーション行政の在り方検討専門分科会(会長=山田裕子同志社大学教授)の第5回会合が4月23日に開催された。市身体障害者リハビリテーションセンターの機能を中心に議論され、最後には会長が「公民の役割分担の視点を踏まえた具体的な機能(案)」に沿って議論をまとめた。リハビリ行政については、切実なニーズを打ち出す一方で、公の役割を医療から生活期における福祉に移行させるなど、出発点から市が目指していたと目される「附属病院廃止」や「補装具製作施設は民間へ」の方向に沿ったまとめである。
リハセンの赤字強調
会合では、市当局が附属病院が重度障害、感染症、複合疾患等の患者を受け入れていることや、回復期リハを過ぎてもリハが必要な民間病院では受け入れ難い(診療報酬制度の狭間にある)患者を受け入れていること、時間をかけて訓練し在宅復帰につながるケースがあること、さらには在宅生活実現に向けて、在宅福祉サービスの紹介や住宅改修などの助言を行っていることなど現に果たしている役割を挙げた。しかし一方で、民間の回復期リハビリ医療の充実や附属病院の入院患者が年間60人程度に止まり、病床利用率が70・2%であることから、年間1億9000万円(過去10年間平均・2億8000万円)の赤字を一般財源で負担していることを強調。
複数の委員から、高次脳機能障害の対応強化や職業復帰・社会復帰を実現する機能強化を求める声の一方、市の役割は人材育成や民間の支援に特化すべきとの意見もあがった。また、京都市が「市は制度の狭間にいる人たちを一手に引き受けられる状態ではない」と発言する場面もあった。
最後に他政令市の類似したセンターの例を挙げ、病床機能を失くして、新たなリハセンの専門性が担保できるのか。病床を残すべきとの意見が出されたが、これについて山田会長は財政面での懸念をコメント。続けて冒頭に紹介したまとめを行った。会長は「医療機能がなくなる中で支援を維持するに際し、これまで病院を中心に発展させてきた専門性をどう担保するのかは自分にもわからず、今後の課題」と述べた。
病院機能なくし専門性担保など
分科会は8月までの残る任期で答申書をまとめる作業に入る模様だが、今回のまとめは驚くべきものと言わざるを得ない。委員から指摘があったとおり、リハビリは医療である。医療にかかる政策を組み立てるのに、拠点である病院機能を棄て去っては、専門性を担保できるとは考え難い。福祉にシフトというが、従来担ってきた役割、例えば制度の狭間で苦しむ人の受け皿機能は福祉施策の観点で果たされていたはずだ。結局、これはただの行政リストラである。協会は、他の専門職団体やリハセンを守りたいと願う当事者と連携し、運動を最大限にまで強化する。(3面に関連フォーラムを案内)
市リハ分科会がまとめた具体的機能(案)
◇地域リハビリの推進が重要。具体的に市が果たすべきは、京都式地域包括ケアとの連携、総合調整機能、人材育成、市民参画・協働、京都府との協調(二重行政の解消)
◇障害児・者更生相談所機能は、3障害および障害児のための総合窓口の設置。専門職による相談・判定機能の充実、民間参入を受けた補装具製作事業者への支援
◇コストがかかり、民間で広がりにくい高次脳機能障害のある方への相談機能・支援は京都市が先導の役割を果たす
◇リハビリ行政については、公の役割を医療から生活期における福祉に移行させる。医療には相当の公費がかかる。センターが培ってきたノウハウを生かし、民間サービス事業等への専門性向上支援が役割