乙訓医師会と懇談
12月8日 乙訓医師会事務所
在宅医療の不適切事例で意見交換
協会は12月8日、乙訓医師会との懇談会を開催。地区から14人、協会から5人が出席した。司会は乙訓医師会副会長の馬本郁男氏。
冒頭、同会会長の橋本京三氏は「懇談会の都度、協会から時宜にあった情報提供をいただき、ありがたく思っている。本日は忌憚ない意見交換を行っていきたい」とあいさつした。
協会からの情報提供の後、在宅医療の適正化に関する議論を中心に行った。2014年度の診療報酬改定では、居住系施設を経営する業者に対してペイバックを支払う不適切な医療機関が報告されたことに起因して、訪問診療料や在宅時医学総合管理料等(以下、訪問診療料等)における「同一建物居住者の場合」の点数が大幅に引き下げられた。さらに、その影響により経営悪化し、施設から撤退する医療機関が少なくない事態となっている。
地区から、「同一建物で、1日で1人ずつ診るよりも、5人を診る方が点数が低いのは当たり前。1施設で50人もの患者を診る医療機関もあると聞くが、50人全員に本当に訪問診療が必要なのか疑わしい」との意見や、「施設の患者を10人診ている程度では、赤字経営になるはずがない。在宅をビジネスと捉えているからこのような問題が起こる」との厳しい意見も出された。
協会は、14年9月に厚労省交渉を行ったことに言及。その際、担当官は「施設への訪問診療に関する不適切な事例は、全国紙で大きく取り上げられ、中医協でも議論しないわけにはいかなかった。ただし、どれくらい点数を下げるかまでは十分に議論できていなかった」と説明したことを紹介した(第2907号にて既報)。その上で、「訪問診療料等の点数は改定前に戻すべき。少なくとも在宅時医学総合管理料等の管理料について、居住する場所によって点数差が設けられていることは問題と考える」との協会の見解を示した。
あわせて地区からは「サービス付高齢者向け住宅(以下、サ高住)」に対する意見も出された。乙訓地域で在宅医療に携わる医師は、「今まで月1回、家族に介助されてなんとか外来通院していた患者が、施設に入所し訪問診療へと切り替わったケースもある。交通の都合などもあるが、家族に『医師が定期訪問してくれる施設なので、楽になった』と言われると、言葉がない」との複雑な心境を吐露した。
さらに、地区から「サ高住の業者にとって、サ高住を建てることは『正義』である。だからこそ、立場の違う業者とも情報共有していくことが必要」として、多職種連携の中に加えていくべきであるとの意見も出された。
不適切な医療機関は全体の2〜3%にすぎない。今回の改定については、「真面目に在宅医療に取り組む医療機関の士気を低下させる規制である」「一部の悪質な医療機関はあるものの、サ高住等の施設側の規制をまず行うべき」との地区と協会の共通の認識を確認し、活発な意見交換は終了した。