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主張

あらためて継続と加入のお願いを 協会の医賠責にこめた精神

 2008年に神奈川県立がんセンターで乳癌手術を受けた患者に高次脳機能障害を負わせたとして、業務上過失傷害の罪に問われていた麻酔科医師に対して、9月17日に無罪判決があった。判決言い渡しのあとに、裁判長は検察側の捜査に苦言を呈したらしい。医療側にとっては、この裁判官の言葉は頼もしくも思える。この案件は10月2日に無罪が確定したが、検察側は麻酔科学会の指針にのっとって常時監視をする義務を怠ったとして、控訴を検討していたようだ。

 2006年、産婦人科を中心として医療界を騒然とさせた、福島県立大野病院の産科事故も、2008年8月に医師の無罪判決が言い渡された。医療への刑事介入は慎重であるべきとする判決の姿勢が反映され、その後医事紛争の刑事問題化は鎮静化したようにも感じる。とはいえ、医療が死と向き合う仕事である以上、医療事故が刑事問題化する不安は払拭されない。

 さて、京都府保険医協会は、全国に先駆けて、民事でしか適用されなかった医師賠償責任保険に、医師が無罪の場合は刑事の弁護士費用も適用される制度を独自に提案して、損保会社と協力して開発した経験がある。その一年後には他社の扱う医賠責も我々に倣っている。会員各位には、機会あるごとにお伝えしているところだが、協会の医療安全対策は半世紀以上の歴史があり、会員の要望に応えて、このような医賠責を開発できたのも、その歴史と経験の蓄積によるものと考えている。時々、協会の医賠責ならびに医療安全と他者との違いが良くわからないとの会員の声を聞くことがあるが、我々が医療安全対策のパイオニアであると言っているのも、上述のことから少しでもご理解いただけることと思う。

 協会では、医師賠償責任保険の充実を図るために、更に努力を重ねているとともに、肝に銘じているのは、常に「会員本位」ということである。この精神を基本に、理事者と事務局が一体となって、日々会員とともに悩みながらも活動していることをどうかお忘れなきよう願いたい。

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