主張/開業医の役割あってこそ  PDF

主張/開業医の役割あってこそ

 国が構想している医療提供体制は「急性期医療への資源集中」と「地域包括ケアシステムの構築」である。ここでの開業医の役割は、ケアマネジャーのコーディネートの下、「在宅療養開始時の指示、急変時の対応・指示、看取り」である。在宅患者に対する医療は二の次になっていて、健康を維持するという観点がない。従来は開業医が中心となり、訪問看護師やケアマネジャー、ヘルパーと協力し、できるだけ在宅生活を維持できるように、臨機応変に対応していた。しかしこの体制では、患者さんは早期退院の誘導により「スムーズに」在宅に「戻され」、まだ病状が安定していないので、再燃し易く、再び急性期医療に戻ることになる。在宅と、医療コストの高い急性期病床を往復することになる。開業医の関与が十分にあれば防ぐことができる。

 開業医は住民が自宅で健康に生活できるよう努力している。患者さんの利便性を考え、ワンストップで対応するために、研鑽を積み、組織や機能の充実を図っている。そのために、薬剤師・看護師・介護士、その他医療職や事務職を雇っているところもある。しかし院内処方での分包は評価されず、評価されない処置も多い。少しでも専門外であれば、医療費はかかるが他院に対応を依頼した方が、診療の手間も省け、7剤超での減点もない。院外処方にすれば調剤要員も不要になるし、デッドストックも発生しない(医療機関や調剤薬局の少ない地方では不可能だが)。

 開業医は、日常の日中夜間の診療、急患の診療や往診の他、健診・予防接種・校医・住民の健康教室等、診療以外でも活動して、住民が健康的に自宅で生活できるように、日夜頑張っているのだが、このことが全く理解されていない。

 開業医の努力を認め、開業医とその運営する組織の能力を評価する制度を希望する。

 現在の制度は複雑で、病院のような強力な事務組織を持たない開業医は十分対応できない。算定請求できる行為であっても、気づかず算定していないこともあるであろう。逆に間違えて算定すると減点になる。減点だけでなく指導・監査の対象になれば一大事である。地方では、院内処方も含め、ワンストップで対応せざるを得ないために、高点数となり毎回、集団的個別指導の対象になる医療機関も多い。このような制度のままでは、特に地方では、廃院する医療機関が増え、当然ながら新たに開業する医療機関もなく、保険証を持っていても医療機関にかかれない事態が発生しつつある。

 保険証1枚あれば、全国どこでも必要な医療を同じ条件で受けることが可能な国民皆保険体制になり50年が経過した。開業医が地域医療に貢献できる医療制度を確立し、国内どこでも平等な医療を受けられる国民皆保険制度を維持することが必要である。

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