主張/迫る超高齢化社会でも揺るぎない社会保障を  PDF

主張/迫る超高齢化社会でも揺るぎない社会保障を

 
 厚生労働省は、過日公表した2014年版の厚生労働白書に、健康寿命の延伸をテーマに掲げた。
 健康寿命とは、健康上の理由で日常生活が制限されず、家族などの手を借りることなく暮らせる年数をいう。日本における2010年の時点で健康寿命は、男性70・42歳、女性73・62歳と世界最高水準であるが、平均寿命の男性79・55歳、女性86・30歳と比較すると、10歳前後の乖離が維持されている。介護や医療への依存度が高まるこの期間を短縮する重要性について、ここで詳説する必要はなかろう。健康寿命を延ばして明るく暮らせる長寿は、誰もが願うことである。
 健康寿命延伸の恩恵を受けた元気な高齢者が増加すれば、深刻化する日本の労働人口減少を補填する展望が生まれよう。その筋道として、個々の技能や体力に応じた職種の割り当てや、企業の経営雇用事情も加味した定年引き上げの議論など、きめの細かい配慮が求められる。
 視点を変えれば、被介護者が増えていく今後、慢性的に不足している介護職域を、世代の近い“若手”高齢者が担当することは合理的、現実的発想ではないだろうか。健康寿命を延ばすためには、現役世代の頃から生活習慣病を是正し、合併症による活動制限を阻止することが肝要である。そのために自治体や企業は、健診受診率向上を目指すだけでなく、健康維持対策を積極的に取り込む実行性が喫緊である。
 ある自治体では、歩数計を貸与して“毎日1万歩運動”に取り組んだり、“60歳代は高齢者と言わない都市”宣言でもって、高齢者の意識改革を促進するユニークな着想もある。医療の立場では、地域に根付いた医療、介護を担うかかりつけ医が、健康管理指導や疾病の早期発見治療に重要な役割を果たしている。この機能を損なわないために、皆保険制度が維持され、フリーアクセスが保障されねばならない。
 迫る超高齢化社会でも揺るぎない社会保障を維持できるか。健康寿命の延伸が鍵になるといえよう。

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