主張/費用の算定項目分かる明細書の発行義務化は即時撤回を

主張/費用の算定項目分かる明細書の発行義務化は即時撤回を

 今回の療養担当規則改定で診療報酬を電子請求する医療機関に対して無償で「項目ごとに分けた医療費の分かる領収書(以下領収書)」及び「費用の算定項目の分かる明細書(以下明細書)」の発行が義務付けされた。

 医療の透明性を高め、患者目線で絶えず医療内容が検証できる体制を構築することに全く異論はない。しかし、現在既に「領収書」は発行されている。加えて医療機関には患者が求めれば「明細書」の交付義務又は努力義務があり、実行している。

 現実にはほとんどの患者は現行の「領収書」で内容を理解・了承しており、院内掲示に関わらず「明細書」が求められるケースは皆無に近い。

 「明細書」を無条件に交付するとなると、膨大な文書量が発生する。例えば、実日数31日の重症患者では、数十枚の紙束となるであろう。詳細を知りたい患者にはそれでも良いが、そこまで求めていない人にまで強制的に渡す必要がどこにあるのであろうか? その紙には極めてセンシティブな個人情報が印字されており、後日処分に困ること必定である。何気なく捨てたごみ袋から情報漏洩し、不利益が生じた場合、患者本人の自己責任ではなく、発行義務化を強要した国の責任が問われて当然である。

 レセプトオンライン義務化を推し進めた唯一の大義名分が、事務作業の効率化・ペーパーレス化とそれによる経費削減であった。オンライン請求義務化が頓挫して旧規制改革会議は、「医療の効率化が進まなくなった!」と息巻いているが、レセプト電子請求の果てが、大量の紙と秘密情報のバラマキとは、何とも矛盾に満ちたムダな“効率化”ではある。

 そもそも療養の給付と、その費用の支払いは保険者の責務であり(例えば国民健康保険法第36条、第45条)、医療機関等は一部負担金を患者から徴収しているに過ぎない(同法第42条)。したがって「明細書」の発行義務は本来保険者にある。現在でも保険者に請求すればレセプト開示される仕組みがある。更に保険者は、世帯ごとの医療費通知を行っており、これに「明細書」を付ければ済む話である。

 今回の改定で「明細書」の年間発行実績を報告することとなった。これには指導・監査的な意味と「中医協答申付帯意見」にある実施状況検証の2つの側面がある。前者の観点からは各医療機関では院内掲示(ただし厚労省例文は極めて拙劣)をして患者から「明細書は不要」の意思表示を受けて、その旨カルテに残す(問診票、同意書、記述等)対応を提起したい。そして後者の視点から、発行義務化の見直しは必至という、自明なムダに対して京都協会は、“即刻療養担当規則改定の撤回”を求め取り組みを行っている。

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