主張/貴重な教訓集積した事例集 ぜひ日常診療の備えにご活用を
まだ医事紛争などという言葉すら一般的ではなかった1959年から、協会は医療安全対策に取り組んできた。68年には、日本初の「医師賠償責任保険」を組織的に導入し、これまでに数千件の医事紛争を取り扱い、ほとんどを解決に導いてきた。
このほど、55年にわたる協会の医療安全対策の歴史の結晶ともいうべき「医事紛争事例集 医師が選んだ55事例」を発行することができた。これは医療安全対策50周年に作成し、好評のうちに在庫切れとなった旧版「医事紛争事例集 医師が選んだ50事例」の全面改定版であり、旧版とは全く違う事例を収録している。
また、読者の要望に応えて旧版も再収録した。さらに、当協会専属の医事紛争対応に精通した弁護士監修による、医療現場で活かせる法律・規則を紹介している。
掲載されている事例は、すべて実際にあったものであり、医療安全対策部会で解決にあたったものである。あらゆる医療機関で起きる可能性のある事例であり、しっかり熟読し、貴重な教訓としてそれぞれの医療機関の医療安全に役立てていただきたい。
時を同じくして、「医療事故調査制度」の設置が決定した。来年10月からの実施にむけて、今はガイドライン作成を行っているところである。医療事故が発生し死亡した場合、届け出る「予期しなかった診療関連死」とは具体的にどのような場合なのか? 院内調査は、特に診療所レベルではどのように行うのか? 専門性、中立性、透明性をもった調査支援機関とは?そもそも、原因究明・再発防止を主眼とする医療事故調査制度の報告書が訴訟に使われる可能性が否定できない、など難題は多い。それにもかかわらず、医療現場に大きな影響を及ぼす「医療事故調査制度」への医療界全体の関心はまだまだ薄いようである。今後の事故調査制度のガイドライン作成に是非関心をよせていただきたい。
そして繰り返すが、この機会に「医事紛争事例集 医師が選んだ55事例」を是非一読して、過去の歴史から貴重な教訓を学んでいただきたい。