主張/誰の何のための一体改革か  PDF

主張/誰の何のための一体改革か

 「税制改革にあたっては…医療、年金、福祉等の社会保障制度を一体として改革すべきである。…その場合…思い切った(社会保障)費用の増嵩抑制策を講じる必要がある。…消費に対する課税の比重を高めつつ、個人ならびに法人に対する所得課税の軽減を図っていくべき」、これは1996年、日本経団連「税制改正に関する基本的考え方」の抜粋である。既に目的と内容の明らかな“一体改革”が示されていた。

 その後、2001年より毎年の「骨太の方針」に則り、この政策内容の一部が強行された。例えば「小泉構造改革」による医療費抑制であり、その結末が医療崩壊であった。08年、福田内閣時代に若干の路線修正された「社会保障国民会議最終報告」が出されたが、国民の不満は収まらず、政権交代を実現させるエネルギーとなった。

 ところが、その交代した民主党政権下で“税と社会保障の一体改革”強行姿勢である。一体改革は決して野田首相の専売特許ではない。まさに15年来の財界・自民党・野田首相(+財務省?)の野合“一体改革”なのである。密談・密約があっても不思議ではない。しかも今日提案されている医療介護改革の将来像は08年報告(上記)のまる写しである。

 今国会の議論は、消費税増税のみが先行している。これには民主党内でも異論が強い。国会議員の選出基盤が自公政権時代からの大きな政策転換を期待した国民であれば当然である。消費税議論の前に、議員・公務員の歳費・給与・助成金を削減すること(期限付きでなく)。税制の改革は応能負担原則を貫徹すること(特に個人の所得・資産に対する累進課税の引き上げ、金融優遇税制の廃止、等)。国家予算の大胆な組み換えを行うこと。徹底した行政のムダを削除すること。…等々財源確保の実績が必要である。天下り・渡り根絶もその一つであるが、根絶が不可能というのであれば、せめて彼らの待遇を我々民間並みにすべきである。勤務医が定年退職後、再雇用となった場合、嘱託扱いで年収は大幅減・退職金なしが現実である。AIJ関連、その他多くの天下り官僚たちの無能ぶりを見ればこの水準でも厚遇過ぎる。

 消費税増税の口実としての一体改革であってはならない。今次診療・介護報酬改定が一体改革の端緒とされるが、地域の療養施設や開業医をないがしろにする方向が明瞭である。これが本当に国民やその医療を第一線で担う我々の望む姿なのか? 一体改革の中身の妥当性議論をいま興すべきである。

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