主張/給付抑制装置の組み込まれた財政構造からの転換を
介護保険制度が2000年に始まって、今年の4月で9年になる。京都市の介護保険料は全国平均よりも約700円高く、高齢者に多大な経済負担を強いている。介護保険の財源は公費50%(国25%、都道府県12・5%、市町村12・5%)、保険料50%と定められている。保険料については65歳以上の第1号被保険者、若年層の第2号被保険者の比率は人口構成比により政令で規定される。保険料は、3年に1度策定される介護保険事業計画における必要額を基に決定される。ところが、その介護保険会計が余っていることが明らかになってきた。08年11月17日付けの京都新聞によると、京都でも06年度から08年度の3年間で、第1号被保険者の介護保険料の剰余金が32億円になる見通し、と報道されている。これは給付の過剰な抑制によるものと考えられる。介護保険制度の創設当時「保険あって介護なし」といわれていたが、これでは「保険料あって介護なし」ではないだろうか。
後期高齢者医療制度の財政構造は、公費:74歳以下:75歳以上が5:4:1と定められている。後期高齢者の経済力からみて徴収可能な保険料に限度がある。その結果、総医療費は後期高齢者から集めた保険料の10倍までに抑えなければならないことになる。どのような制度改革でも、創設時は移行時の混乱を抑制するために、移行措置が取られる。今回も以前と変わらないとしきりに宣伝され、実際に受けられる医療内容には変化はなかった。しかし、今後保険料負担の引き上げが限界に達した時には介護保険でなされたのと同じように、医療給付抑制が行われる。
介護保険制度は、現在まで続く社会保障「改革」のトップを切って創設された。そしてオンライン請求、キャップ制など本丸である医療保険制度改革の実験的、露払い的な役割を果たしてきた。4月に予定されている介護報酬改定は、制度創設以来初めて3%引き上げられることが決まっているが、前述の財政構造が決められている以上、保険料の引き上げにつながりかねない。
介護報酬の引き上げは必要なことであるが、それに終わらず根本的な財政構造の変更が必要である。また、介護保険の問題は同様の財政構造を持つ後期高齢者医療制度の将来像である。後期高齢者医療制度は手直しではなく、一旦廃止して抜本的な再検討が必要である。