主張/歴史ふまえ理念の前進を
環境・平和と社会保障・同基本法案をテーマに理事・事務局学習会が開かれた。ここでは前者について述べる。まずこれらの問題を考える枠組みとして、環境については「複雑、広範、長期にわたる問題のため、不確定要素を除外できない。しかしそうであっても、将来において不可逆的に失われてしまう利益を守るために、現在の利益を犠牲にする社会的な判断と決断が求められる。これがこの問題の前に横たわる困難の一つである」など。また平和については、「この問題を考えるためには、グローバリズムや格差をふまえ、アメリカ、アジア(特に東アジア)を視野に置く」「憲法9条の理念が世界的に定着するには時間を必要とするだろうが、理念を放棄せず、理性的、現実的な対処を追求するべきである」「絶対的安全保障はありえず、また軍事による安全保障は核武装に行き着かざるをえない」「国家間には、歴史、政治、経済、文化、国民性などに際だった違いがあり、それに対し平和と安全を見据えて、現実的、理性的に対処することが重要」などが示された。また社会保障基本法案前文の「社会保障による生活の安定の実現は、日本国憲法が前文で掲げる恒久平和の実現に寄与しうると信ずる」も示唆に富む。
また環境にかかわる協会活動報告では、40年ほど前から公害部設立の必要性が議論され、1970年に公害部・同委員会(現在は環境対策)が発足し、時代の変化に応じた活動を続けてきた。そしてその根底に流れているのは、「各種団体には、それぞれ公害の研究や対策を担当するグループの設置されることが望ましい。人命尊重に徹すべき医師たる者も当然これに積極的に参加していかねばならない―発足時担当理事」である。
次に平和にかかわる報告では、40年前の京都ベトナム支援医師の会設立をはじめとして、核戦争防止国際医師の会京都支部、京都反核医師の会、京都戦争展、医師・医学者の戦争責任を考える活動などに参加、2005年には九条の会アピールを支持する京都医療人の会が設立されている。そしてこれらの根底に流れるのは、「生命の尊厳をふまえて、平和を守る上での医師の役割を強めることは、国民医療の改善とは切り離すことのできない課題である―定時代議員会」にある。
そしていま我々に求められているのは、たとえ困難であったとしても、この長い歴史をふまえ、時代の変化に応じた改革を行い、そしてその理念を前進させることであり、その後退であってはならないであろう。