主張/損税解消で医療界一致の対応策を
4月から消費税が8%になり、3カ月が経過した。消費税アップ分は診療報酬でカバーしているとされているが、全く実感はない。そもそも消費税は何を買っても8%の税金がかかるというわかりやすい税金を実現するため、その影で複雑な計算・考え方をしなければならない。例えば、生産者が税抜き500円で卸に売るとき、卸は540円支払う。卸は税抜き1000円で小売店に売るときには小売店は1080円支払う。小売店は消費者に税抜き1500円で売れば、消費者は1620円支払う。それぞれ消費税は40円、80円、120円支払っているが、生産者が消費税として納税するのは40円、卸は80円のうち40円分はすでに支払っているから、40円、同様に小売店も40円となる。生活必需品の免税、軽減ということがよく言われるが、その実践のためには、どの部分を軽減すれば良いのか難しいのである。
社会保険診療は非課税とされているため、この例でいうと小売店に当たる医療機関が、最終消費者とされ80円払っているのに本来の最終消費者から消費税を徴収できないため、損税が生じる。薬剤費は薬価の計算に消費税が組み込まれているため、損税は発生しないと考えられる。
この損税を解消するため、今までは診療報酬に消費税分が上積みされているものとしていたが、この方法では支払う消費税が医療機関によって違うため、解消されるはずがない。損税を解消するための方法として、我々が今まで提唱してきているのはゼロ税率方式である。これは、税率0%として支払った消費税を申告して還付を受ける方法で、確実に損税は解消される。また軽減税率は、その時点の税率から軽減された消費税を患者から徴収する方法で、これも支払った消費税は仕入税額控除できるため、損税は解消される。しかし、これらの方法で医療が営利事業と判断されれば、事業税の非課税、4段階税制が否定される可能性があり、また申告の事務負担が過重になる可能性も注意が必要である。ゼロ税率と似ているが異なる方法として「カナダ方式」などといわれる非課税還付方式もある。
すでに、病院は損税が過大になって存続が危ぶまれる医療機関もあるという。一方、診療所にとっては事業税の非課税・4段階税制の撤廃は死活問題であり、共通した対応策が出しにくい状況だ。しかし、消費税10%は目前に近づいており、医療界が一致団結して対応しなければならない。