主張/少子高齢化対策は地方再生から
民間有識者会議「日本創生会議」が今年5月、全国の半数の自治体が2040年には消滅する可能性があると発表した。
過疎地域では、学校の統廃合で、子育て世帯の流出だけでなく、地域の拠点でもあった小学校がなくなり、運動会・学芸会などの行事や学校維持のための協働作業も消滅し、明治、遡れば藩政時代から続いていた地域社会が崩壊しつつある。
安倍首相も最優先課題に「地方創生」を掲げ、担当相も置いた。総務省の「地方中枢拠点都市」や国土交通省の「高次地方都市連合」は県庁所在地レベルであり、「コンパクトシティ」構想も、所詮、歩いて日常生活が可能な「地域包括ケア」が成立しうる地区が対象である。集落が散在する山間地域は忘れられている。
一極集中が進む東京は、超少子化が進み合計特殊出生率は全国最低である。所得は最高であるが、待機児童数は最多、持ち家率、三世代同居率は最低で、子育て環境が悪い。女性の就業率も全国平均以下であり、未婚率は最高、非婚、晩婚化が進む。65歳以上の者の、子との同居率では、東京は鹿児島、北海道、宮崎に次いで低い。60歳以上の一人暮らし率は東京が第1位である。孤立化した高齢者介護のために人手が必要となり、地方からこの東京へ若壮年人口が吸収される。このことが日本全体の少子高齢化に拍車をかけ、日本を衰退させる。
古代から村ではお互いの足りないところを知り、補いつつ協働してきた。村人は、地域を維持する「仕事」をし、生活のために「稼いで」いた。現在でも行政の規模が小さく人的財政的能力の限られている町村は、住民の相互の「仕事」により何とか維持されている。高齢者でもできる「仕事」はあるが、若壮年人口の流出により「仕事」能力は減り、そして消滅に向かう。
今のうちに若者が生活できる社会、子育て環境のよい社会を地方に再構築すべきである。物価、人件費も安く、対象人口も少ないので、都会に投資するより少額で済む。地方での居住や起業に魅力を感じるような大胆な優遇政策を今こそ実施すべきである。
住民は役場や役場職員との距離も近く、その能力財政力を解っているので、「稼ぐ」ためにではなく「仕事」をしてくれる。職住接近であり、自然や地域コミュニティーが残っている今であれば、地域で子育てができる。高齢者は「仕事」が復活し、孤立化も防げ、平均寿命と健康寿命の差も縮まるであろう。
さらに、新天地で第二の人生を始める気力のある中高年を大都市から呼び込めば、高齢化社会の新たな展開にも繋がるであろう。