主張/専門医制度改革に慎重な判断求めたい
専門医制度改革の争点について考えてみる。
従来から学会が行っている専門医制度が、国民の求める専門医像と隔たりがある、専門医の質が担保されていないとの議論が起こり、厚労省の「専門医のあり方に関する検討会」が設置された。同検討会は、2013年4月には報告書を出し、その方向性が示された。改革の二つのポイントの一つはこれまで学会が行ってきた専門医の認定を日本医師会会員や日本医学会会員等が社員として構成される社団法人日本専門医機構(14年5月に発足)が行うということ。二つ目は総合内科専門医、外科専門医などで構成される18制度の専門医に総合診療専門医が新たに加えられたことである。
この制度改革の争点は二つあると思われる。一つ目は総合診療専門医という専門医が本当に必要かということ。総合診療専門医は本当に専門医である必要があるかと疑問を感じる。他の専門医と同一レベルで考えるのに違和感を感じる。しかし、厚労省がこの専門医設置を新たに行ったことには大きな意味があるはずで、この制度の肝ではないか。
また基本領域での専門医の選択は一つしか認められていない訳だが、現在の医療界は例えば救急医と脳外科医、整形外科医、内科医と総合診療医、リハビリテーション医と整形外科医などダブルボードをもった医師の貢献が不可欠である。この矛盾をどのように解決するか、議論が必要である。
もう一つの争点はこの制度で医師の地域の偏在、診療科間の偏在が改善されるかということ。偏在の話と制度の話を関係付けるべきでないとの議論もなされているが、この制度を偏在改善に利用しようとする意図がみてとれる。偏在が解消されるとすれば逆に言えば医師の局在と専門科の選択が完全に国によってコントロールされるということになる。いずれにせよ専門医制度改革は医療供給体制に大きな影響を与えることは必至で、この制度設計には慎重な判断が求められる。