主張/地域開業医に対する正当な評価を  PDF

主張/地域開業医に対する正当な評価を

 2025年医療・介護サービス提供体制の姿を目指した改革の準備が、着々と進められている。医療の機能分化を図る第二歩目の、14年診療報酬改定が行われた。協会が廃案を求めている医療・介護総合確保法案も5月15日に衆議院本会議を通過。参院では厚労大臣が本法案に用いた論拠データを撤回するなど、法案自体の正当性が問われる事態にもかかわらず、会期内の成立を目論んでいる。

 今改革は「持続可能性」の名の下、病床機能分化を中心とした医療提供体制改革を進め、医療費抑制のための病床削減・平均在院日数短縮を図る。その一方で、受け皿とされる介護サービスも、要支援者に対するホームヘルプサービス、デイサービスを給付から除外する。病院の機能分化によってこぼれ落ちる患者、介護サービスから除外される利用者は「互助」で、あるいは市場化された医療・介護で補う構想だ。

 この構想で位置づけられる開業医像が、在宅、地域包括ケア、あるいは入院へと患者をふるいわける、どんな病気でも診られる医師、今さかんに言われている「総合診療専門医」である。

 多くの開業医は病院勤務医時代に、専門医として診療に従事してきた。そうした経験をバックボーンに、開業後、一定プライマリケア医の役割を担いつつ専門外の疾病の場合は病診連携、診診連携で重篤化を防いできた。単科の専門医として開業した場合でもそれは同じだ。病気の重篤化を防ぐということは、ある程度医療費の高騰化も防いできたということで、国が推し進めようとしている総合診療専門医には、こうしたことに対する評価が一切なされていない。

 医療提供者からも患者からも、一定のニーズがある総合診療専門医の必要性を否定するわけではない。しかし、国の提唱する総合診療専門医には、公的な医療・福祉保障の観点がなく、医療費抑制のためだけに提起されているとしか思えない。この方向性では、医療のフリーアクセス、自由開業医制も否定されかねず、国民皆保険制度の根底を揺るがす。

 まずは今の地域開業医に対して正当な評価がなされ、その上でより良質な医療を提供するための総合診療専門医制度が議論される必要がある。

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