主張/国民の求める医療が担える医師の養成を

主張/国民の求める医療が担える医師の養成を

 医師臨床研修制度の見直し論が盛んである。医師不足の大きな原因は、新臨床研修制度に伴い、大学医局の派遣機能が低下したためとするもので、日医の代議員会でも地方から見直しの声があがっている。

 舛添厚生労働大臣は、「2年の研修期間を1年にしてはどうか。一気に8千人医師が増えるので即効性がある」と見直し発言をしている。これには、賛否があり、大学関係者は賛成、病院団体や、医学生、研修医自体は反対が多いようである。

 そもそも新しい研修制度の必修化にあたっては、海外に比べて不十分だった卒後研修を改め、全ての医師に対して幅広い総合的な臨床研修能力と初期救急救命能力を修得することにあった。以前、岩手県一関市で、生後8カ月の男児が、救急病院や総合病院で次々と断られて死亡した事例でも、当直医が整形外科医であったり、眼科医であったりして、小児科に対応できなかったためで、専門しか診られない医師を養成してきた旧制度、あるいは大学での研修制度の欠陥ともいえる。

 医師不足に対して医師の増員はもちろん必要であるが、小児科は小児科医しか診られないという体制を変えない限り、限界がある。初期救急には、全ての医師が対応できるような教育研修体制が理想である。幸い、医学連の卒後研修アンケートでも将来希望する診療科として、内科・小児科医、総合医・家庭医、救急科などニーズの高い科が上位にあり、将来専門医を目指すにしても、救急やプライマリケアを学んでからという学生は多い。そうした医学生が、大学よりも臨床研修の充実した市中の研修病院に向かったのは当然ともいえる。

 新臨床研修制度は、ローテイト研修が必修とされたが、新制度の評価に関する調査結果では、旧制度の研修医に比べて、気管挿管ができるなど、幅広い臨床能力の研修状況が著しく向上したとされている。初期研修は、救急と基本科のプライマリケア修得の場であり、後期研修においても、例えば、内科ならば循環器、消化器、呼吸器科など幅広い研修の上に専門科に進むことや、休日や夜間は、他科の救急や診療を継続して行うような工夫も必要であろう。

 新制度の成果はあがってきており、以前より守備範囲の広い医師が育ちつつあることは確実であり、今後は後期研修の充実をはかって、国民の求める医療を担える医師を養成しなければならない。医師不足を研修の短縮で安易に解決するのは、この流れに逆行するのではないだろうか。

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