主張/医療・社会保障の実情見据え制度再構築の国民的議論を

主張/医療・社会保障の実情見据え制度再構築の国民的議論を

 国政のあり方を決める衆議院選挙は、民主党の圧勝に終わった。今回の選挙の国民の大きな関心事は、マスコミの世論調査では「医療・介護・年金・福祉」問題にあった。

 民主党はマニフェストで、レセプトオンラインを自民党が完全義務化を推し進めたのに対して、原則化に改めて小規模医療機関や地方医療の崩壊に配慮したこと、診療報酬において外来管理加算の5分間ルールを廃止することや、後期高齢者医療制度の廃止等を挙げた。また、医療とも深く関連する社会保障費については、1年に2200億円削減という小泉内閣に始まった政策方針も今後修復される方向にあると思われる。小泉政権から始まった、構造改革路線にある医療費適正化の名の下に行われた医療費削減政策に対しても、療養病床削減計画の凍結、安心できる地方医療の確保、混合医療の導入の是非、先進国の中で対GDP比では低い医療費をOECD平均に増額する等の問題について改めて議論されることを期待したい。

 また、選挙後に民主党は官僚中心による政策から、より政党自らの直接的な指導強化を表明しており、厚生労働省に対しても管理を強めていくことも示唆され、官僚主導と中医協体制による医療政策に見直しが図られる可能性が考えられる。今後、従来から行われてきた、官僚や中医協に対して、日本医師会および他の団体を介して医療サイドの意見や要望を伝えるという対応法が転機にあるのかもしれない。

 保険医協会は以前より、日本において国民が安心できる医療・社会保障制度の確立を目標に、社会保障基本法立法化を求める運動や医療制度改正について、今回の選挙で政権与党となった京都の民主党議員をはじめ他党の議員との懇談を設けてきた経過もあり、今後も引き続き多くの課題に対して議論する機会を増やしていきたいと考えている。

 今後、医療、社会保障、福祉に対し国と自治体の果たすべき役割が、今の日本の医療・介護・福祉の実情を見すえて、国民的議論の上に立つ制度の刷新が図られることを新政府に望みたい。

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