主張/保険医の人格と尊厳守られる指導・監査の実現を  PDF

主張/保険医の人格と尊厳守られる指導・監査の実現を

 昨年末の衆議院選挙での自民党の圧勝によって自民党の暴走が続き、医療介護総合確保法など国民皆保険が形骸化する恐れもある中にあって、指導・監査の名のもとに、行政による開業医への締め付けが強まっている。
 2009年度からその業務が地方厚生局に移管されて、ますますその傾向を強めている。一部の指導医療官等による高圧的な態度など、全国で多くの相談が寄せられるようになった。指導・監査に関係すると思われる事件は以前にもあった。
 93年10月「赤ひげ先生」と呼ばれた37歳の開業医が、個別指導を苦に自らの命を絶った富山の事件。この自殺事件は医療界に大きな衝撃を与え、中医協や国会でも取り上げられた。当時のTV番組、ラジオでも流され、ドキュメントとして本も刊行されるなど、大きな社会問題となったのである。改善を求める全国的な運動の結果、個別指導等の実施根拠である指導大綱、監査要綱が大幅に見直され現在に至っているが、その後も残念ながら多数の自殺者の報告がある。保険医の人格と尊厳が守られるような指導・監査の実現を目指して、20年以上たったこの事件を風化させないよう行政の指導・監査に目を向けていかねばならない。
 指導・監査の目的は保険診療の制度が適正かつ円滑に運用されるためのものであり、指導は診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼としている。監査は内容、請求上の不正等が疑われる場合に、的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を行うとある。しかし、現実には指導から監査に移行となれば保険医取り消し処分となる可能性があるなど、行政は保険医の人権や不利益処分などを大きく左右する性格を持っている。
 昨年8月、日弁連から「健康保険法等に基づく指導・監査制度の改善に関する意見書」が出された。我々には大きな力となる。期待することとして、我々にとっても今後の診療改善にもつながる個別指導選定理由の開示、指定された診療録に対して適切に準備を行うための時間的余裕、いるだけでも落ち着ける弁護士の帯同(立会権)、現場での録音・録画を全国的に認めることなど、改善を期待したい。安心して良い診療を続けていけるためにも。

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