主張/保険で良い医療と医業経営を 医師の声を届けよう  PDF

主張/保険で良い医療と医業経営を 医師の声を届けよう

 塩崎恭久厚生労働大臣が、5月に開催した経済財政諮問会議で医師の地域偏在・診療科偏在の是正策を検討すると言及した。「骨太方針2016」の素案で書き込まれた是正策への「規制的手法も含めた」は、成案では「実効性のある」に書き換えられたが、その真意は同じであろう。いよいよ国が「偏在解消」を名目に、保険医定数制導入と自由開業制見直しという医師数統制に本腰を入れるということだ。

 昨年の経済財政諮問会議では、「経済・財政再生アクションプログラム」を取りまとめ、社会保障分野の改革の方向性と工程表を示している。工程表では2016年末までに、入院時の光熱水費相当の居住費の患者負担化や、かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担導入、高額療養費制度の限度額引上げ、市販類似薬の負担増や保険外しなどについて検討し、結論を得ることになっている。

 病床機能分化で効率化を図るという「川上」政策、川上から溢れた患者の受け皿となる地域包括ケアシステム構築の「川下」政策、医師の偏在是正策、そして患者への負担増政策。どれをとっても国民皆保険制度の根幹を揺るがす大きな問題である。

 協会は「保険で良い医療と医業経営を」を目標に、診療報酬改善要求を筆頭としてその時その時の為政者に医師の声を届けてきた。それが医師の裁量のもと最善と思われる医療を患者に提供できる体制をつくりあげた。また自由開業制のもと、保険で健全な医業経営を成立させ、医師は地域医療にまい進することができたという歴史がある。

 課題ももちろんあるが、それでも国民皆保険制度をこれまで維持し、国の医療費抑制策との攻防を繰り返してきたのである。今、日本の社会保障制度の姿が大きく歪められようとしているこのときこそ、地域医療の現場で働く我々医師が声をあげ、広く国民に実態を訴えるとともに、ともに社会保障を守る運動に立ち上がるときである。

 ひとりでも多くの医師を協会の仲間として迎え、この難局に立ち向かいたい。

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