主張/低線量・内部被曝の小児甲状腺がんの危険性
広島、長崎での原爆症認定制度は限られた範囲内の直接被爆者しか救済できないような基準で、小児甲状腺がんなどの低線量での内部被曝による健康被害は切り捨てられてきた。一方で、「原子力の平和利用」の名のもとに原子力発電が造られ「電力の安全で安価な供給源」として宣伝されてきた。しかし、チェルノブイリ、スリーマイル島で起こった大事故でも、実際の低線量被曝についての明確な報道はされていない。これは「原発安全神話」のもとでの、「低線量での内部被曝は健康に影響しない」というものであろう。しかし、今回の福島での原発事故では低線量での内部被曝による小児甲状腺がんを無視できないという被曝被害に直面している。
チェルノブイリの事故では小児甲状腺がんの増加は240倍にのぼり、さらに150キロ離れた地域でも小児甲状腺がんは発生している。これらは、低線量での内部被曝の危険性について警告を発したものである。
また、ICRP(国際放射線防護委員会)は、20mSv以下を安全域として示したが、その基準でも小児甲状腺がんの発生が確認されている。
福島において低線量による内部被曝が窺える小児甲状腺がんの増加がみられる。今後もさらに増えていく可能性も予想され、調査を進めていかなければならない。また調査は長期にわたるものであり、統計方法の公平性にも疑問が指摘されている。甲状腺がん以外にも白血病やその他のがんが増加しているとの報告がある。さらに放射線被曝の感受性の高い小児・乳幼児以外の成人についても低線量による内部被曝の被害増加が明らかになってきている。
日本の放射線被曝の専門家たちは原発推進派の立場をとって、科学的な根拠のない説明で、被害を過少評価し、マスコミに喧伝している。そして、放射線汚染にさらされている住民に危険な理論を押し付けようとしている。今後も、低線量での内部被曝の危険性については注目をし、その経緯を明確にしていかなければならない。