主張/介護現場の再建は急務である

主張/介護現場の再建は急務である

 今、介護の現場から人が去りつつある。通所介護のサービス施設や、訪問介護のステーションで、「要求はきりがないが、担い手が集まらない」との声が大きい。

 来年度から始まる第4期の介護保険事業計画の成否を左右する、これは重要な問題である。労働の内容に比べて「給与が低すぎる」のが根本的な原因であり、高い志を抱いて就職した人たちの離職率も高くなっている。

 「金を払ってるんだから、時間内はしっかり働いてちょうだい」「炊事の仕方が荒っぽい」などなど、寄せられるさまざまな苦情のフォローに走り回る、ヘルパーやサービス提供責任者の胸の思いはいかばかりか、想像するにつらくなる。身体の虚弱な高齢者や認知症の方が参加する施設での気配りも、懸命にやればやるほどその責任に身がすくむ。

 折から後期高齢者医療制度の施行で、医療保険から多くの療養病床が、介護保険施設に転換していく。35万床の医療・介護療養病床を22万床にするというのだから、差し引くと13万人が新しい介護施設へ籍を変えることになるはずである。が、施設転換は政府が思うようには進んでいない。現場の医師たちには“療養難民”という言葉があらためてずっしりと重くのしかかる。

 問題解決の鍵となるべき、「在宅療養支援診療所」は、少しずつ増えているとはいえ、全診療所のほぼ一割の水準を大きく脱してはいない。「24時間応需」の壁が、これに取り組む医師たちの精神や健康の前に大きく立ちはだかっている。

 医療制度改革を言うのなら、その受け皿ともなる、療養病床を含めた介護分野の再建を急がねばならない。宮島新老健局長は、財政制度審議会の論議も受けながら「2200億円のマイナスシーリング」の中で「要求すれば予算がつくというものではない」と述べ、「5つの安心プラン」に向けて向こう3年間で取り組むという抱負を語っている。

 振り返ってみれば、「措置から契約へ」という言葉で“粉飾”した、行政責任の形骸化と自己責任の押し付け、そしてコムスン問題で露呈した民間の営利企業の参入と市場化など、「構造改革」路線へ訣別をつけるときではないのか?悠長に構えている時間はない。

【京都保険医新聞第2654・2655合併号_2008年9月1・8日_1面】

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