主張/京都の医療安全は保険医協会から
医事紛争の2015年度状況を踏まえて
2015年度京都府内の医事紛争の主な特徴を挙げると、次のようになる。
(1)事故報告件数は27件で、前年度に比べ7件減少しており、ここ数年減少傾向は維持されている。(2)事故報告数の病診比率は病院:診療所≒5:4で、病院の減少が著しい。(3)全事故報告中、97・2%が既に解決した(過去最高の解決率)。(4)複数回の紛争報告をされる会員医療機関が減少傾向にある。(5)弁護士会主催の医療ADR(裁判外紛争解決)が若干の増加傾向にある。
これらのデータを見れば、医療現場の状況が少しずつではあるが、確実に改善されているといえる。最高裁の公表している医療裁判数も800件台で推移しておりほぼ横ばいである。医療安全に関しては、2000年代後半から言われていた医療崩壊は一応の終息を迎えたと判断してよいだろう。政府が設立した医療事故調査制度(事故調)も、当初危惧されたような、医事紛争の刑事問題化等は起こっておらず、想定以上に報告数も少ないようだ。ただし、協会は過去45年分の統計データから、17年度ごろに紛争の急増が起こる可能性を示唆してきた。現在、重大な医事紛争数が増加している様子はないが、細かい紛争件数は若干増加の傾向を示している。油断大敵である。会員各位には、今だからこそ医療安全対策に力を入れていただきたい。過去の協会の経験から、紛争が頻発した時代では、事後対応に追われて、事前対応、つまり予防対策までなかなか手が回らないことも十分考えられるからである。繰り返しとなるが、今こそ医療安全対策を充実させるチャンスである。
協会は半世紀以上も医療安全に取り組んできた、全国的にも稀にみる医療団体である。実績も確かなものがあると自負している。会員各位にとっては、他者と比較もしづらく、協会のどこが具体的に良いのかわかりにくい面もあろうかと思われるが、実際に医事紛争を経験されなくても、協会の予防対策に関わるシンポジウムや研修会、出版物をまずは改めて確認していただきたい。必ず「協会ならでは」の経験とテクニック、考え方をご理解いただけると思われる。
ここで具体的な協会の活動を二つほど紹介させていただく。協会オリジナルの「医療安全研修DVDPart2」が月刊保団連の7月号に紹介されている。また、17年3月4日(土)には恒例の医療安全シンポジウムを開催し、医療と介護、特に高齢患者に関する医事紛争を取り上げる予定である。会員各位には是非ともご利用または参加願いたい。
最後に、不明な点はいつでも事務局にご連絡いただければ、個々に応じた対応をとれるよう体制を常に整えている。京都の医療安全は京都協会から始まったと言っても過言でなく、これからも会員本位の医療安全を目指していく所存である。