主張/レセプトオンライン請求の義務化とその先の問題

主張/レセプトオンライン請求の義務化とその先の問題

 一般診療所におけるレセプトオンライン請求義務化の期限が、来年4月に迫っている。医療界に混乱を起こし、我々の本来の職務以外に多大な責務を強要する問題あるこの制度について、現状を分析してみたい。

 まず、オンライン化に対応困難な医療機関に対しての配慮について、「現行以上の例外規定を設けないこと」としつつ、「地域医療の崩壊を招くことのないよう、自らオンライン請求することが当面困難な医療機関等に対して配慮する」とある(「規制改革推進のための3か年計画(再改定)」)。経過措置の対象医療機関を地域医療への影響を出さない範囲で取り決める、という意向のようだが、具体的には未だ検討中の段階であり、我々の混乱を助長している。ちなみに、一足早く義務化された薬局および400床未満の病院で、オンライン請求ができていない機関には、半年をめどとした猶予期間が設けられたものの、それ以後は診療報酬を支払わない方針を明言している。

 オンライン請求が難しい医療機関には、三師会による代行請求を認めているが、三師会の人手が足りず、委託になることが考えられる。その委託先、委託料について厚労省は、適切な第三者に事務を委託することは可能とすべきと回答している。ただし、“適切な第三者”は具体的には決まっておらず、代行請求の手数料についても、国は代行請求を利用する医療機関、薬局における費用負担の軽減等を検討していきたいとの方針を示すものの、具体的には何も決まっていない。

 次に、電子化されたレセプト情報のデータベース構築は、医療費適正化計画の作成、実施及び評価に資するために医療費等について調査、分析を行い、結果を公表するためのものである、としている。が、その活用方法は、「条件付で他の目的での利用も考えられる」と述べられている。しかし、具体的な内容は未定であり、データ管理に関しても“条件を満たす民間業者に委託する”という極めて曖昧なものである。

 さらに、傷病名コードの統一(標準化)の目的は、医療保険事務全体の効率化であり、最終的には国民に利益がある(理論的には自分のレセプトを見ることも可能になる等)としているが、韓国の例にもみられるように、標準の枠から外れた医療行為は減点対象となり、結果として、萎縮診療の増加および混合診療の拡大を招く恐れがある。

 最後に、現在開発中の社会保障カードが導入されれば、医療、介護、年金、レセプト情報等が全てリンクすることになる。いわゆる“国民総背番号制”の導入である。ひとつでも滞納があれば、医療の受給資格が制限される可能性を秘めた制度であり、多大な問題を抱えた制度であると言わざるを得ない。

 最低限、“義務化”は阻止する必要があり、その先に我々が正しい医療を提供できる環境を確保できることが望ましいと考える。神奈川および大阪での訴訟の行方を見守りたい。

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