主張/マイナンバー制度で医療機関はどうなる?
マイナンバーは、複数の行政機関に登録されている情報を、同一人の情報として確認できるインフラ(一つの社会基盤)として導入されたものである。政府は目的を、(1)公平・公正な社会制度の実現(2)利便性(3)効率的な行政等の利点を挙げているが、果たしてそうであろうか。
制度はこの10月より12桁の番号が個人に通知され、来年1月より実施予定である。まず、社会保障(年金、雇用保険、福祉分野の給付等)、税(申告書・法定調書等の税務関係書類)、災害(被災者台帳の作成・支援金の支給)の3分野で利用が開始される。
これにより医療機関は、 従業員(パートを含む)やその扶養家族からマイナンバーを収集することになり、特定個人情報を取り扱う「個人番号取扱事業者」として、その管理、源泉徴収票や雇用保険等の届出書類への記載などの責務が課せられる。また、医療分野では、2017年7月以降のできるだけ早期に「個人番号カード」に健康保険証の機能を持たせ、医療機関の事務の効率化を図るとしてマイナンバーの利用が検討されている。さらには、医療連携や研究に利用可能な番号「医療ID」を導入し、マイナンバーのインフラを活用して紐付けする方向での検討も進められており、9月3日に成立した改正マイナンバー法の特定健診への利用拡大は、まさにその第一歩と言える。この様な多岐にわたるマイナンバーの記載義務や利用範囲の拡大は、情報の漏えいや悪用のリスクが高くなる。
今のところ医療機関のマイナンバーの利用・提供は、社会保障・税に関する手続き書類の役所等への提出のみであるが、「保管・安全管理」「削除・廃棄」などが大変な上、法律違反に対する罰則が強化されており、相当な負担になる。今年6月に発覚した年金情報流出問題で、行政機関のセキュリティが万全でないことが明らかになった。破られないセキュリティはなく、多くの国民は個人情報の漏えい・流出の怖さに気が付いた。そして、患者の医療情報という機微性の高い情報を取り扱う医療関係者こそマイナンバー制度のセキュリティにおける危険性を訴えていかねばならない。
将来、医療機関から漏えい・流出が起これば、世論の反応や被害規模、慰謝料、社会的信頼の失墜など年金情報流出の規模ではない。今こそ、マイナンバーの危険性を知り、制度の在り方に疑問を持ち、マイナンバー阻止の全国運動を展開しようではないか。