主張/わが国の医療にも融和を

主張/わが国の医療にも融和を

 アメリカ大統領選挙で民主党オバマ氏が勝利した。彼は2004年、人種や政党を超えた国民の融和をスローガンに掲げて政界に登場し、着実に国民の支持を拡大していった。そして市場原理主義の破綻が一気に加速した今日、彼の唱える「変革」への期待が全米を席捲し、アメリカ史上初の黒人大統領の誕生を後押しした。

 一方のわが国は伝統的に変革を嫌い、自己の属する組織に籠もりがちな閉鎖的な国民性を有している。これは日本独自の文化や政治体制の形成に大いに役立った。戦後の高度成長期はこれで良かったかも知れない。しかし右肩上がりの経済成長が望めなくなった今、わが国の様々な現場で縦社会による組織間の没交渉が足かせとなり、社会全体の発展が阻害され閉塞状態に陥っている。なかでも縦構造による機能不全の最たるものは医療界であろう。

 最近問題となっている周産期救急医療において、脳出血を併発した妊婦を母子ともに救うには、産科、脳外科、小児科そして麻酔科の少なくとも4診療科の協力が必要となる。これまで各科の学会が共同で周産期救急に関する会合をどれだけ持ったであろう。また患者を送る側と受け入れる側の医療機関同士のスムーズな連携も必要である。しかし昨年、勤務医の一部が中心となり全国医師連盟を旗揚げした。これが日本医師会とは袂を分かつようなことになれば、はたして開業医と勤務医間の意思疎通がうまく図れるであろうか危惧されるところである。

 ここ京都では、京都府医師会が二条駅前に新しい会館建設を計画中であるが、京都府保険医協会の入居については未だに不明のままだ。現医師会館において両者は同じ医師と医療を守る立場で活動しており、1日も早い態度の決定を望みたい。
このように考えてくると、今医療に最も必要なことは診療科、開業医と勤務医、思想信条の違いを超えた医師の融和であることに気づかされる。それこそわが国の医療崩壊を阻止する最良の処方箋である。

【京都保険医新聞第2665号_2008年11月17日_1面】

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