主張/「国土強靭化」で社会保障の後退は許されない
民主党は自公時代の社会保障の伸び毎年2200億円の削減を撤回し医療費抑制策からの転換を謳い、マイナス改定の続いた診療報酬改定は、2010年、12年とわずかながらもプラス改定、医療崩壊の流れを一定くいとめた。「コンクリートから人へ」の理念には大きな期待を抱いたが、消費増税を置き土産に3年3カ月で政権の座を降りた。元々小泉内閣は新自由主義路線で、社会保障は抑制し消費増税に消極的だった。その路線を引き継いだ安倍内閣は07年の参議院選挙で大敗。福田内閣で「社会保障国民会議」を設置、25年度までの社会保障改革と財源を算定した報告書を作成、麻生内閣で消費税を含む税制改革を明記した。
12年に、民主党が閣議決定した「社会保障・税一体改革大綱」は、右記の修正焼き直しである。野田内閣は、自公との3党合意で社会保障制度改革推進法を含む社会保障と税の一体改革関連8法を成立させたが、自民党の意見を丸のみしたため、国民皆保険の堅持や社会保障の機能強化の文言がなくなり、医療・介護の給付適正化が前面に出たものとなっている。安倍内閣の再登場で経済財政諮問会議も再開し、社会保障に関しては、今後社会保障制度改革国民会議で検討することになるが、外来受診時の定額負担や混合診療の全面解禁が検討課題になる恐れもある。
一方、「国土強靭化」と称して公共事業を拡大し、「人からコンクリートへ」と方向転換。新規国債発行も民主党が定めていた44兆円枠を突破しそうである。消費増税分は社会保障の充実と安定維持に使うという大義も危うい。増税をするなら社会保障の充実に使うべきであり、税が増えても還ってくる実感を持つことが重要である。内需拡大につながる雇用創出効果も、公共事業より医療・介護への投資の方が高い。70〜74歳の1割負担も参院選後2割に上げるようだが、年2000億円の財源で1割に据え置くことができるのに、10年間で200兆ともいわれる公共事業の犠牲にしてはならない。