主張/「共通番号制度(マイナンバー)」に医療・介護情報をリンクさせるな
今国会には医療に関連した法案が数本上程される。いずれも医療機関や国民生活に重大な影響を及ぼすものであるが、その中に「マイナンバー法改正案」もある。番号法は運用前から法改正され、番号のなし崩し的利用拡大が医療分野でも決められていく。
共通番号制度は来年1月から運用開始とされているが、自治体でのシステム開発が遅れている。ここを拙速に進めると重大な陥穽を作りかねない。本邦IT業界大手のF社社長人事や、T社受注の特許庁システム開発の委託に“反社会”組織が介入するなどの現実がある中、悪意が付け込むスキだらけとなりそうだ。原理的にベンダーや回線・システムメンテ業者等は“合法的に”個人情報見放題である。また、共通番号制度は、将来的に個人を特定して全情報を紐つけ・名寄せができる仕組みを巧妙に忍ばせている(データの継続性等の口実)。この事情は、現行のレセプト情報収集でも同様である。番号制度下で国民各人の最も機密性が高い個人情報の漏洩・不正使用リスクが、飛躍的に高まる。しかし、個人データの継続性便宜等のために安全性を犠牲にしてはならない。
並行審議の別法案では「個人が特定される可能性を低減したデータ」は本人同意なく利活用可能と規定し、さらにその上に際限ない利用拡大の仕組みが議論されている。データを、政策や研究に活用するとの説明は単に口実に過ぎず、行政や企業・保険会社の真の狙いは個人が特定された機密情報そのものである。ここでは権力者も業界も“反社会”勢力と同一メンタリティである。
昨年12月の「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」では、マイナンバーとは別の番号制度が提案された。別制度にすることは当然であるとともに、さらにその流用範囲を制限し(医療連携は各医療圏内に限定する)、この番号を共通番号にリンクにさせない仕様が求められる。すでに全国には約200の大小様々なIT医療連携システムが構築されている。これを個別番号制度として各医療圏内に拡げるだけで良く(圏外との互換性は不要)、開発コストも激減できる。医学研究等には、完全匿名化したデータに加工すれば誰でも利用可能で、全国的研究にも大きな支障はない。