中小病院対象に第5回フォーラム
新専門医制度で迫られる厳しい対応
「中小病院と今後の提供体制」をテーマに、協会は第5回開業医フォーラムを2月7日に開催。吉中理事の司会で、渡邉副理事長から情勢報告を行った後、清水聡氏(新京都南病院院長)から中小病院の実情についての報告と、冨士原正人氏(京都ルネス病院院長)から地方都市で病院を維持する立場から話がされた。その後、参加した7病院21人で新専門医制度や地域医療構想などが中小病院に与える影響についての意見交換を行った。
中小病院に厳しい三つの現実
清水氏は自院について、7対1看護102床の救急に特化した急性期の病院として5年前に設立。連携する京都南病院が一般の急性期と亜急性期をみることで、地域で完結する医療を目指していることや、グループとしてほかに六つの診療所や老人保健施設、グループホーム、サ高住による、小さいながらも地域包括システムを形成していると紹介。
中小病院のおかれた状況について、(1)機械的に病床数で区切った大病院でしかとれない診療報酬が多い(2)人口減少で全体の医療需要が厳しい(3)医師の偏在=大病院指向、新専門医制度の影響—の三つの厳しい現実があると指摘。さらに、医療・介護総合確保法による地域医療構想の中で機能分化による減床、転床を求められる危惧と、新専門医制度による大学復権で、大学と関係なくやってきた病院での医師確保がより厳しくなると、危機感をあらわにした。
そうした病院再編の中で中小病院はどう生き残っていくかについて、残念ながら急性期の病院としては難しくなっていくので、地域包括ケアシステムに乗らざるを得ず、かなり介護にシフトせざるをえないと語った。
「集約」は最悪の選択肢
冨士原氏は、福知山市人口が8万人を切り患者の減少に加えて、地域の経済格差も進行しており、経済的に困窮して受診できない人が増えていると指摘。医師確保が難しい地域で急性期の民間病院を続けているのは、医療を受ける側の価値観の多様性に応えられる多様な病院があるべきと考えるからと、理想とする医療への思いを語った。
中国では受診整理券のダフ屋横行問題が報じられているが、日本でも大病院に紹介したがん患者の手術が半年待たされる状況が生まれている。医療機関を減らして「集約」が進めば、それがもっと酷くなる。「集約」は最悪の選択肢であると、マスメディアを通じて国民に知らせる必要があると話した。
医師養成と供給に危機感
意見交換では、新専門医制度が提供体制に与える影響についての不安が語られた。基幹研修施設あるいは連携施設になれなければ、これまで実績があったところでも医師養成ができなくなる。大学が主に基幹研修施設を担い、それを頂点にしたピラミッドが再構築されることで、医師の再配分が事実上大学に委ねられることになる。「これほど地域の病院にとって厳しい制度はない」と悲痛な声が聞かれた。
また、ある専門科では、京都で基幹研修施設は大学病院一つとされ、基幹施設となれる規模でありながら、連携施設を断られたために他府県施設との連携を模索しているが、断られれば大学で育ててもらってから来てもらうしかなくなるとの声もきかれた。
さらに、これまでも派遣医師は大学の都合で引き戻されており、新専門医制度の中で「地域医療崩壊を招かないように」と語られても、信用できないとの意見があった。
その他にも、「小さな病院では医師だけでなく看護師、専門職を雇うにも体力がなく、制度の狭間で将来像が見えないのでこの会議に参加した」「産婦人科・小児科を中心に急性期を担ってきたが、そういうあり方が機能分化の振り分けでは想定されていないのではないか。大きな病院の関連病院として産婦人科に特化した道を探るしかないのか」「小児科に関しても集約化への流れが避けられないが、重症患者ばかりに目が向いていないか。地域の病院で医師養成が難しくなっていっていいのか考え直すべき」「地域の医療は病院の6割以上を占める中小病院が支えている。これがなければ医療・介護難民が溢れる。上から言われているばかりではなく、今日のような議論を重ねてのボトムアップが必要」との意見が交わされた。
最後に垣田理事長より、中小病院のおかれている厳しい立場について認識を新たにした。新専門医制度は医師の統制に使われていくことが明らかになってきており、地域から志ある医師が輩出されなくなることは大きな問題。ここにきて病院団体から延期要請も出るなど動きが活性化している。協会は今秋、京都で開催する保団連医療研究フォーラムに向けてしっかりと議論し、国に対して発言していきたいと締めくくった。