中医協で改定論議再開 協会 実調結果受け談話発表

中医協で改定論議再開 協会 実調結果受け談話発表

 中医協は10月30日、政権交代に伴う新委員選任後初めて総会と診療報酬基本問題小委を開き、次期診療報酬改定に向けた議論を再開した。新政権が掲げる医療費の先進国並みの確保、勤務医の処遇改善などを、どう実現するのか課題は多い。厚労省は、12月18日頃までは水曜と金曜日に開催して検討項目の議論を一巡させる意向だ(改定関連の情報は今月から「グリーンペーパー」別冊で報道)。

 また、改定の基礎資料となる医療経済実態調査の結果が、同日の中医協総会に報告。これを受けて、協会では経営部会副理事長の談話をまとめた。

医療経済実態調査結果を受けての談話

4回連続のマイナス改定で診療所は15・6%の減益
疲弊した医療機関全体の体力回復につながる改定を

 厚生労働省は10月30日、09年6月に実施した、第17回医療経済実態調査の集計結果を中医協に報告した。

 集計結果によると、一般診療所全体において収支差額は悪化している。前回07年6月の165万4千円から、今回128万3千円に低下し、収支率は17・4%から12・5%に低下した。

 一般診療所(個人)「入院診療収益なし」の収支差額は前回07年6月224万1千円から、今回204万8千円に低下し、収支率は35・1%から30・7%に低下した。

 収益、費用をみると医業収益は4・8%の伸びを示しているものの、経費部分が11・6%の伸びを示しているために収支差額が悪化している。

 また、医業収益が4・8%伸びているとはいえ、保険診療収益は2・4%の伸びしかなく、自費診療や健診等の収益がそれぞれ50・5%、21・1%と高い伸びを示していることによる。

 一方、費用については給与費や材料費の増加に加え、職員の福利厚生費や建物の賃借料、支払利息等の「その他の費用」が74%も増加していることが収支差額を悪化させている。

 01年6月時点の収支差額と今回の収支差額を比較すると242万7千円が204万8千円に低下し、15・6%の減益となっている。02年以降連続4回のマイナス改定の影響が如実に表れており、このままでは地域医療を支えている診療所の体力も低下していく。

 この発表を受けて、マスコミは今回も「開業医年収

勤務医の1・7倍」などといたずらに開業医と勤務医を対立させるように報道している。

 報道に用いられている数値は、個人診療所を除く医療法人診療所とその他診療所の院長の平均年収であるが、経営者という立場の開業医と、被用者という立場の勤務医の年収を単純比較することに、合理性は見いだせない。

 医療法人の院長の多くは経営者の立場にあり比較的年齢が高い。勤務医は雇用される身分であり比較的年齢が低い。さらに個人診療所の院長の年収には、借入金の返済や建物の改築費用なども含まれており、そのまま給与とすることはできない。

 条件の違うものを無理やり単純比較することによって、開業医から勤務医に報酬配分をシフトさせればよいという世論誘導を行っても医療崩壊は防げない。

 今、厚生労働省に求められているのは、「格差是正」と称して開業医から勤務医に診療報酬の配分を付け替えるのではなく、低すぎる勤務医の待遇を改善できるようにすることと同時に、02年以降のマイナス改定で疲弊した医療機関全体の体力回復につながるプラス改定であることを強く訴えたい。

2009年11月10日
副理事長 内田 亮彦

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