中京東部医師会と懇談会
3月10日 京都府保険医協会・会議室
「新専門医制度」実現に疑問視の声
協会は、3月10日、中京東部医師会との懇談会を開催した。当日は地区から4人、協会から6人が出席した。司会は中京東部医師会・安野哲也理事。冒頭、同会の岩野正宏会長が「医療制度改革で地域包括ケアなどが次々と打ち出される中、地区医師会も地域医療での対応が迫られ、地区医師会がどれだけそれらを担えるのか不安に思う。協会には、上手くいっている地区の事例紹介をはじめ、患者さんとの接点をどのように持つかなど、地域医療の担い手として必要な情報を教えていただきたい」とあいさつ。垣田理事長のあいさつ、協会から情報提供の後、意見交換を行った。
地区からは、「新専門医制度」について意見が出され、「本当に日本で実施できるのかと疑問に思う。スウェーデンは医療の公営化決定から実現までに100年以上かかっている。それぐらい時間をかけて作っていかないと実現は困難だ。欧州諸国では入院と救急は病院、外来は診療所と完全に役割分担している。日本で、外来をすべて診療所の総合診療専門医が担うとすれば、眼科や耳鼻科専門、内視鏡専門などなくなってしまう。『新専門医制度』には、こうした種々の問題で議論の余地があると思う」との意見があった。
これに対し協会からは「『新専門医制度』の問題は全国に先駆けて議論してきた。地域医療の観点からも問題点が明らかになり、日本病院会等が実施延期の声を上げ始めた。若手医師は、初期臨床研修終了後3年間は基幹研修施設と連携施設しか回れなくなり、中小病院に若手医師が確保できなくなる懸念がでてきたからだ。大学医局再編の問題とも絡んでくる。加えて病床削減を進めていけば地域医療が崩壊してしまう」と警鐘を鳴らした。
また、これに関連して地区より「TPPによってアメリカは高薬価の薬剤を売りつけ、医療機器も然りでTPPによって本当に日本の医療は崩壊する」との意見に対し、協会より、「TPPについてはご指摘の点の他、新しい治療方法や手術などを特許保護の対象にすることが言われており、新たに特許料の支払が必要になり、費用の高止まりによって医療費が上がる懸念がある」と述べた。
また、次世代を担う医師の育成の必要性が出された他、諸外国の医療制度紹介、さらには医師会とは違った保険医協会の存在意義についてなど、活発に意見交換があり閉会した。