下京東部医師会と懇談  PDF

下京東部医師会と懇談

7月8日 ホテル日航プリンセス京都

話題の中心は新専門医制度・総合診療専門医

 下京東部医師会との懇談会では、地区から16人、協会から11人が出席。木谷輝夫同会副会長の司会で進行した。佐々木敏之会長、垣田協会理事長のあいさつの後、各部会からの報告に加えて、協会の総会を控え「情勢報告」や「協会2015年度基本方針(案)」「新専門医制度」について話題提供し、活発な意見交換を行った。懇談では、都道府県単位の医療費管理やジェネリック使用率引き上げ問題などについても話題に上ったが、やはり関心の的は、新専門医制度・総合診療専門医であった。

多くの会員の思い代表する疑問・意見噴出

 出された疑問・意見は、以下のようなことである。

 (1)総合診療専門医は、全医師の何%くらいを占めることになるのか。希望者は全員研修を受けることができるのか。

 (2)総合診療専門医のカリキュラムは、これから卒業後総合診療専門医を目指す人向けになっているが、すでに開業している我々とどのようにかかわってくるのか不安だ。現在すでに別の専門医を標榜している開業医が、総合診療専門医になろうとする場合について何が決まっているのか。

 (3)今後は全員がこのシステムの中で専門医資格を取らなければならなくなるように読めるが、どうなのか。

 (4)標榜科も規制されるようになるのか。

 (5)この新専門医制度の目的は何なのか。

 これに対し協会からは、次のように回答した。

提供体制絞り込みに使われる危険性が大

 (1)オフィシャルには出ていないが、日本専門医機構で総合診療専門医の制度設計をする有賀委員長(昭和医科大学病院長)は、今年4月のインタビューに答えて、「仮に人口1万人に1人の総合診療専門医が必要になるとすると、1万2000人の総合診療専門医を養成しなければならない」としている。これを京都にあてはめると、例えば上京区なら区内で6〜7人になり、とても地域の実態とは合わない数字だ。しかし卒業生の1割が総合診療専門医を目指すとすれば、だいたい15年くらいで達成できる。それくらいの時間をかけて時とともに置き換わっていくことを狙っているのかと推測される。

 また厚労省の「保健医療2035」は、「総合的な診療を行うことのできる『かかりつけ医』」を今後10年間程度ですべての地域に配置し、その診療については包括的な評価を行う。特に高齢者と子どもについては、かかりつけ医を持つことを普及させる。受診時の費用負担については、他医療機関と差を設ける」といった絵を描いている。専門医制度における総合診療専門医を、診療報酬の方では「かかりつけ医」と表現するといった形で曖昧にするのだろう。

 (2)現在の専門医資格をどう移行させるかについてなど、我々にとってベーシックなところは決まっていない。今の学会専門医も所定の研修を受ければ、総合診療専門医になれるようにするという文面になっているが、具体的な内容は、はっきりしていない。医師にもライフサイクルがあり、いつまでも心臓外科や脳外科でやっていくわけにはいかないが、制度設計そのものが外科や脳外科での実績件数を求める形であるため60〜70歳になっての資格更新は難しく、これが実質定年制になっていくことも考えられる。

 もう一つの問題は、基本領域で総合診療専門医をとった医師が、そのあとサブスペシャルティ領域の専門医資格を取れるのかだ。どうやらいけそうと言われているのは、感染症の専門医だが、これも噂の段階。疑問や不満はどんどん言っていかないと、学会の都合で決まる面がある。

 (3)現在専門医の資格を持っている医師はのべ16万人くらい。だから逆に、総ての医師はどれか基本領域の専門医資格を取りなさいと整理された経緯がある。2年前、規制改革会議で後藤田内閣副大臣(当時)は、「そこらの町医者に総合診療専門医としてもう1回試験を受けさせて、カチッとするべきだ」といっているが、向こうにはそういう認識があるということを踏まえた上で、総ての医師が地域医療を担えるように主張していかなければならない。

 (4)標榜できる科目についても、必ず規制されてくると思う。

 (5)新専門医制度は、医師の定数と定年問題を一挙に解決するのが狙いだ。手術件数が規定数に満たなければ、それは外科系にとっては定年を意味し、都道府県で専門医の研修枠を定めれば、定数制限にいきつく。一方では医師の国際研修制度を設け、海外進出するスーパードクターを育てるということも考えられている。専門医制度がうまく使われようとしている。

開業医医療への無理解に出席者から怒りの声

 これに対し、出席者からは、我々の努力も知らずという怒りの声とともに、今こそ、まとまって声を上げていくべき。協会は切迫する情勢の重大さを強調して、今後の運動を進めてもらいたいとの声が挙がった。これを受け垣田理事長は、来年、10月に京都で保団連医療研究フォーラムを開催する。われわれは、開業医の復権を柱に据えて国の政策への批判を大胆に打ち出すとともに、先輩たちが築いてきた日本の医療の良さを、次の世代に広く知らせたい。1年がかりで準備していくので、是非ご参加をと呼びかけた。

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